いのちの代償
山岳史上最大級の遭難事故の全貌!
川嶋康男著
(ポプラ文庫:571円+税)
ISBN/ASIN:4591111581
※古書を購入
久しぶりに読んだ「遭難本」。
1962(昭和37)年12月、北海道の大雪山で起きた北海道学芸大学(現北海道教育大学)函館分校山岳部の遭難事故を扱ったノンフィクション。この遭難事故では、11人パーティのうち10人が死亡した。
北海道教育大学は以前、札幌、函館、旭川、釧路、岩見沢の5つの分校に分かれていて(いまは分校とは呼ばないらしい)、各分校はとても小規模な大学だけど・・・この当時、函館分校だけでこれだけ大人数の山岳部があったことがまず驚きだ。しかも、本格的な冬山合宿まで行うほど本格的に活動していたとは。
たいていの遭難事故は、天候などの悪条件と判断ミス、あるいは判断の遅れ、そしてちょっとした不運が連鎖して起きる。普通であれば、どこかで連鎖が断ち切られて、ギリギリのところで事故は防がれるわけだけど・・・事故が起きてしまってから当時を振り返ると、確実に連鎖が続いている。これは山岳遭難事故でも、航空機事故や原発事故でも同じことだ。
だから、連鎖の糸を断ち切り、重大な事故になる前に状況を改善するシステムが必要なわけだけど、「自己責任」の上に成り立つ登山の場合、こういうシステムは経験という形でしか成立しない。しかも、経験は個人に蓄積されるから、毎年人が入れ替わる大学の山岳部のようなところでは、なおさらこのシステムが成立しにくい。
近年、大学の山岳部が大量遭難を起こさない理由は・・・大量遭難を起こすほどたくさんの部員が集まらないという理由が多いだけという気もする^^; その代わり最近は、登山ツアーなどで中高年者の大量遭難がたまに起きる。つまり、この本に描かれた遭難事故当時大学の山岳部にいた学生やその後輩たちが年をとって、再びいま、大量遭難事故を引き起こしているわけだ^^;;