BOOK「宇宙からみた生命史」

宇宙からみた生命史
小林憲正著
(ちくま新書:800円+税)
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宇宙の中で、我々は特殊な存在であるという生命科学の天動説から、どうやらありふれた存在のひとつらしいという地動説に変わってきている。その根拠が、近年、急速に知見を広げているアストロバイオロジー。生命誕生の謎を解き明かす鍵が「宇宙」にある・・・もはや荒唐無稽なアプローチではなくなった。できることなら、わたしが生きているうちに、地球外生命の存在だけでも発見されて欲しいものだ。
でも、この手の本で、個人的にひとつだけ馴染めない点がある。
地球以外の多くの場所に、生命誕生の可能性があるということと、知的生命体にまで進化した地球外文明があるということ、それが観測可能または交流可能な近距離に同時代的に存在すること、これらには大きなギャップがある。もし仮に、すぐ近傍の地球外文明があったからといって、我々地球文明を粗末に考えて良い理由にはならないし・・・地球外文明の有無を問わず、自分たちがどう発展し、どこに向かっていくかを考えるべきだと思う。
この本は、かなり広範なアストロバイオロジーを取り上げてきている。総合的に思索を広げるのは勝手けど、ちょっと情緒的に広げすぎではないだろうか。

雑誌「milsil ミルシル アリ」(2019年No.6 通巻72号)

国立科学博物館が発行している自然と科学の情報誌。(隔月年6回発行。税込定価428円)
今回の特集は「アリ ~その多様な生き方に迫る~」。身近な昆虫だから子供の頃はよく遊んだものだけど・・・最近は見たことがない。子供時代とは違って、地べたを見ることもなくなったからからなのか、都心にはアリが棲んでいないのか? 少なくとも減っているのは間違いないだろうな。
いま日本が必死に定着を防ごうとしている外来生物「ヒアリ」にも触れている。ヒアリは主にコンテナに紛れ込んで運ばれてくる。当然、大きな港から国内に広がるだろうから・・・事実、青海埠頭とか大井埠頭あたりから見つかっている。大井埠頭は家からそう遠くないので、ちょっと心配だ。鎖国でもしない限り、いつまでもずっと、水際で駆除し続けることはできないから、やがては日本中に広がるのだろうな・・・。
集団的、組織的に生活するアリの生態は、それだけとりだしてもたいてい面白い。

BOOK「物理学天才列伝 下 プランク、ボーアからキュリー、ホーキングまで」

物理学天才列伝 下
プランク、ボーアからキュリー、ホーキングまで

ウィリアム・H・クロッパー著
水谷淳:翻訳
(講談社ブルーバックス:1,300円+税)
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上巻を読んで、なかなか下巻には手が伸びずにいたけど・・・一念発起。下巻は、量子力学、原子核物理学、素粒子物理学、天文学・天体物理学・宇宙論の四章。「物理学の世紀」と言われる20世紀のトピックスを網羅している。紹介されている人物の中で、リーゼ・マイトナーだけ、記憶にない名前だった。プロトアクチニウムの発見や核分裂の研究などに業績のあった学者。
物理学の世界では有名どころが勢揃いしているけど、登場する人数が増えた分だけ、扱いがあっさりして・・・逆に研究内容や業績の解説の割合が増えた印象。順に読んでいく分には上巻より楽だったけど・・・素粒子のように目に見えない世界に突入して、テーマ自体が難解になったせいもあり、面白みは半減している。まあ、興味の持ち方次第だろうけど・・・。

BOOK「スリランカの赤い雨 生命は宇宙から飛来するか」

スリランカの赤い雨
生命は宇宙から飛来するか

松井孝典著
(角川学芸出版:1,600円+税)
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地球以外の太陽系天体のいくつかに液体の水が存在することが明らかになり、また遠く離れた系外惑星の発見などにより、地球外生命体探しが面白い状況になっている。地球外生命体は、知性を持つほどに進化したものとは限らない。微生物で十分なわけだけど、そうした微生物が宇宙空間を渡って地球までやってくるのか?という問題に関わる研究の本。
2012年、スリランカに降った赤い雨から細胞状微粒子が発見された。これが果たして宇宙からやってきたものなのか? 地球の生命の起源が外来のものである可能性はあるのか? 期待して読んだ割には・・・尻すぼみというか、よく分からない。煮え切らない。難解な本というより、意味不明な本という印象。トンデモ本とはいわないけど・・・。もう少しはっきりしてから出版すべきだった。
もし宇宙由来の細胞状微粒子だとしたら、他の研究者が大騒ぎしてもおかしくないと思うけど・・・2013年11月に出版されて以降、続報がないんだよな。

BOOK「リチウムイオン電池が未来を拓く」

リチウムイオン電池が未来を拓く
発明者・吉野彰が語る開発秘話
吉野彰著
(CMC出版:1,000円+税)

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生の本。
リチウムイオン電池は、スマホをはじめ身近なところでいろいろ使われていて、まさに世の中を変えた技術のひとつだと思う。むかし、ウォークマンを持ち歩いて外で音楽を聴く習慣はなかったけど、仕事で録音機能は頻繁に使っていたので、廃棄する使用済み電池は中々の量があった。最近ではテレビやエアコンのリモコンの電池交換くらいで、めったに電池を廃棄することがなくなった。それも吉野先生のお陰。
この本では、リチウムイオン電池の原理や開発に関することだけでなく、技術革新によって世の中がどう変わるか、今後どうなっていくかなど、吉野先生の考えがいろいろ述べられている。先日読んだ、『NHKカルチャーラジオ 科学と人間 電池が起こすエネルギー革命』とほぼ同じような内容だった。

MOOK「NHKカルチャーラジオ 科学と人間 吉野彰 電池が起こすエネルギー革命」

NHKカルチャーラジオ 科学と人間
吉野彰
電池が起こすエネルギー革命

吉野彰著
(NHK出版:985円+税)

NHKのラジオ第2放送のコンテンツ「カルチャーラジオ 科学と人間」シリーズをテキスト化した書籍。ノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生のテキストを読んだ。
全13回の放送で、最初の数回は「電池の仕組み」や「電池の歴史」といった入門編。次いで、リチウムイオン電池の開発秘話など、吉野先生の研究開発、商品化に関わるお話。最後はリチウムイオン電池が世の中に与えた影響、今後の社会にどう貢献していくかなどの総括という構成。
ラジオ番組のテキストなので、ラジオにはない図解があったりして平易にわかりやすく、なにより読みやすい。マスコミの報道は研究開発での業績が中心で、商品の実用化、商品化への動きはあまり触れられていなかったけど、企業人としての側面にも触れられていて興味深かった。

BOOK「図解 超高層ビルのしくみ 建設から解体までの全技術」

図解・超高層ビルのしくみ
建設から解体までの全技術

鹿島著
(講談社ブルーバックス:880円+税)
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ぜんぜん関係ない話だけど・・・村上龍の小説『コインロッカー・ベイビーズ』が出たのは1980年。西新宿に超高層ビルが立ち並んで・・・という時代背景を紹介するシーンを憶えている。でも、気がつくと、都内は至る所に超高層ビルが生えている。日本のように地震の多い国では、特別な技術が求められ、超高層ビルには向かない国土であるという認識は大むかしのものだ。
すでに赤坂プリンスホテルは解体されてしまったけど、霞が関ビルはいまだ現役。東日本大震災で倒れた超高層ビルは1棟もなかったし、首都圏直下型地震にも耐えるということになっている。
ゼネコンが著者なので、建設工法が中心ではあるけど、安全性や快適性など幅広く紹介している。ブルーバックスとしては入門書レベルで、あまり突っ込んだ内容はなかった。