BOOK「世界を救った日本の薬 画期的新薬はいかにして生まれたのか?」

世界を救った日本の薬
画期的新薬はいかにして生まれたのか?

塚崎朝子著
(講談社ブルーバックス:1,080円+税)

今年、ノーベル医学生理学賞を受賞が決まった本庶祐・京都大学特別教授、2015年受賞の大村智・北里大学特別栄誉教授をはじめ、15人の日本人研究者とその成果を紹介している。専門用語をそのまま使用しているので、レベル的にはそれなりに基礎教養のある人向けの本で、一般の人は理解しづらいかも知れない。
日本の医学・生理学研究のレベルの高さを示す本だけど・・・本庶先生のインタビューに、厳しい研究環境と産業構造の問題点が垣間見える。日本人ノーベル賞受賞者がみんな必ず言うことだけど・・・もっと基礎研究に資金を回して欲しいというのがひとつ。本庶先生だから言える厳しい言葉・・・日本の製薬会社は多すぎる。5社にしぼって、資本力を高め、基礎研究の成果を創薬に結びつけられるように。厚労省が薬価を決めて、護送船団方式で競争せずに製薬会社を守っている現状への批判は、本庶先生クラスじゃないと言えないだろうし・・・第三者であるジャーナリストがまとめた本だからこそ公に出来ることなのかも知れない。

BOOK「わたし琵琶湖の漁師です」

わたし琵琶湖の漁師です
戸田直弘著
(光文社新書:680円+税)
※古書を購入

琵琶湖は日本一面積の広い湖で、内水湖では唯一の漁業組合がある。それだけ、産業として漁業が大きな一を占めているのだろう。著者の戸田氏は琵琶湖の漁師として活躍される傍ら、琵琶湖の生態系を考え、改善していくための活動もされている。水質汚染、護岸工事による破壊、外来種、鵜、漁協の老齢化・営利追求体質、伝統的漁法の喪失など、危惧すべき問題は多い。
特に後半では、バスやブルーギルといった外来魚を放流し、釣ったサカナはそのままリリースしてしまう、いわゆる「スポーツ」「遊び」としての釣りとの対立が描かれている。
これは、あくまでわたしの個人的見解だけど、外来魚を放流した人間は死刑、それを釣って楽しむ人間は、放流された外来生物を絶滅させるまで強制労働を課すべきだと思っている。それだけ、取り返しの付かないことをやったのだと自覚させる上でも、厳罰に処すべきだ。

雑誌「milsil ミルシル ふしぎで多彩な変形菌の世界」(2018年No.5 通巻65号)

国立科学博物館が発行している自然と科学の情報誌(隔月年6回発行。税込定価420円)。
今回の特集は「ふしぎで多彩な変形菌の世界」。この「ミルシル」の特集記事は、科博が予定している企画展のテーマと微妙に関連していることが多いのではないかと思っているけど、今回の「変形菌」は、関連している気配がない。昨年末から今年のはじめにかけて、「南方熊楠」の企画展をやったばかりだし。「変形菌」は地味な存在ではあるけど・・・わたしは熊楠ファンなので、嫌いな存在ではない。
この号で気になったのは巻頭のインタビュー記事。リチウムイオン二次電池を開発した吉野彰氏(旭化成名誉フェロー)・・・ノーベル賞候補の呼び声も高いので、名前だけは知っていた。モバイルだ、ウェアラブルだと身の回りの電子機器の進化にはついていけない勢いがあるけど、それもこれもこの電池があってこそのこと。いくら感謝してもバチは当たらないはず。

BOOK「動物たちの反乱 増えすぎるシカ、人里へ出るクマ」

動物たちの反乱
増えすぎるシカ、人里へ出るクマ

河合雅雄、林良博編著
(PHPサイエンス・ワールド新書:880円+税)
※古書を購入

テレビのニュースなどで、シカやサルによる農業被害、人家のある地域にイノシシやツキノワグマが出没したなどという話があると、有識者なる人たちが「里山の荒廃」という言葉を口にする。この言葉を聞く度に、わたしは納得のいかないものを感じていた。そしてこの本を読んで、わたしは「里山」というものを理解していなかったことに気がついた。
わたしは北海道に生まれ育ったので、本州でいうところの、隅々にまで人の手が入った「里山」というものを実感してこなかった。いまの北海道は違うだろうけど、半世紀近く前の北海道には、里山のような中立地帯はほとんどなく、裏山ですらヒグマが支配する土地だった。だから、廃村により人間が後退した地域、開発が進んで里山を切り拓いてしまった地域では、その頃の北海道と同じような距離感に生まれてしまっているのだろう。
人口が増え、人間がどんどん自然を切り崩していた時代は、野生動物はゆるやかに絶滅する方向で減っていく。でも、地方が衰退し、放棄地が増えると、野生動物が反撃してくる。自然保護の意識もあるし、むやみに駆除もできない。さらに、外来生物という援軍?も押しかけてきて、勢力を伸ばしている。『進撃の巨人』のような壁でも作るしかないんじゃないかな^^;;

BOOK「世界に勝てる! 日本発の科学技術」

世界に勝てる! 日本発の科学技術
志村幸雄著
(PHPサイエンス・ワールド新書:800円+税)
※古書を購入

「モノづくり日本」といわれて久しいけど、神戸製鋼所や三菱マテリアルなんかが、製品の性能を長年にわたって偽ってきたとか、日産自動車が品質検査をきちんと行ってこなかったとか・・・いろいろ目を覆いたくなる事態がつづいている。いままで、盲信に近い形で信じてき二メイドイン・ジャパンへの信頼も薄らいでしまうのじゃないかと心配だ。
この本では、いまのところ他国の追随を許さない「サイエンス型革新技術の創出」の代表として、アンドロイドロボット、スピントロニクス、ナノカーボン、高温超電導、光触媒…などについて紹介している。これだけいろいろあるなら、しばらくは安心だという気もするけど・・・韓国や中国に技術が流出して、あっという間にシェアを失うなんてことがないように気をつけないと。過去の二の舞にならないよう慎重にことを進めてもらいたい。

BOOK「ねむりからさめた日本ワニ 巨大ワニ化石発見ものがたり」

ねむりからさめた日本ワニ
巨大ワニ化石発見ものがたり

野田道子・作
藤田ひおこ・絵
(PHP愛と希望のノンフィクション:1,262円+税)
※古書を購入

子ども向けの本だけど、古代日本のワニ化石というテーマにひかれて読むことにした。ルビのふられ方から推測して、小学校高学年なら楽に読める本だろう。
いまから40万年前まで、日本にはたくさんのワニが棲息していた。それを証明したのは、昭和39年に大阪豊中市で発見された「マチカネワニ」の化石。推定6.5メートルもの大きさがあったらしい。この化石を発見した二人の高校生(浪人生)のお話とその後の本格的な発掘調査のお話。
その後、ワニの化石は北海道を除く日本各地で発見されているとか。日本にいつから人間が住んでいるか意見が分かれるところだけど、40万年前なら旧石器人がいてもおかしくはない年代。
因幡の白兎に登場する「鰐」はサメのことらしいので、日本の神話時代にマチカネワニの生き残りがいたわけではない。下水道でワニが繁殖しているという都市伝説があるけど・・・温暖化がすすむ現在なら、外来生物として日本でもワニが棲息してもおかしくないのではないか? カミツキガメが定着できるわけだから、ワニだって可能なはずだ。

BOOK「pepper分解図鑑」

pepper分解図鑑
日経テクノロジーオンライン/日経エレクトロニクス/日経Robotics:編集
(日経BP社:25,000円+税)

たまたま知人が持っていたので「絶対に汚さない」「折り目を付けない」という約束で、1週間だけ拝借して読んだ。実際、読むときは白手袋を付けてページをめくった。
書名の通り、ソフトバンクが販売しているロボット『pepper』を分解したときの写真を、部位ごとに並べただけの本で、読むべき部分はほとんどない。しかも、部品のサイズを測るでもなく、重さを計るわけでもなく、ろくに調べてもいない。
実を言うと、pepperにはたいして興味はない。会ったことは1度だけ。2016年10月、リニューアルしたばかりの「TDK歴史みらい館」(秋田県にかほ市)のロビーで出迎えてくれたpepperに会ったことがある。あまり喋ってくれず、愛想のないヤツだという印象だった。
表紙を除いた総ページ数は100ページに満たない。印刷のクオリティやサイズは博物館の図録と同等だけど、図録のページ数と比べるとかなり薄い。でも、値段は図録の10倍くらい。
そのむかし、AIBOの分解本がヒットしたから、その二番煎じで・・・コレクターアイテムとして作ったのだろうけど、文字通りのコレクターアイテムだった。まあ、なかなか目にすることのできない貴重な本であることに間違いはなく、貸してくれた友人に感謝!^^

BOOK「エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ」

エネルギー産業の2050年
Utility3.0へのゲームチャレンジ
竹内純子編著
伊藤剛、岡本浩、戸田直樹著
(日本経済新聞出版社:1,700円+税)

仕事先から資料としてお借りした本。今後の電力事業の展望を紹介している。この本の背後にどういう利害関係があるのかよくわからないけど・・・にわかには納得しがたい未来像も含め、いろいろ書かれている。
わたしが生きてきた間に、2回のオイルショックがあり、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島と3つの原子力発電所で大きな事故が起きた。その度に大騒ぎしたけど、大きくいってしまえば、その間に起きたことは省エネへの世界的な転換という一点だけだろう。日本では電力の自由化とかで、いろいろ販売合戦があったけど、とくに何も変わらなかった。この本でも、自由化あたりの動きは過渡期的なものとしている。
「Utility3.0」などとわかりにくい言い方をしているけど、未来の電力会社は電力そのものを売るのではなく、電力を使用したことによるメリットを売る方向に変わるということらしい。大きな流れとしてはわかるけど・・・わたしの頭ではピンとこない。まあ、こういう本を読んでピンと来る人が大金持ちになり、大企業に成長していくのだろうけど・・・残念ながら、わたしではないようだ。