BOOK「日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実」

日本軍兵士
アジア・太平洋戦争の現実

吉田裕著
(中公新書:820円+税)
※古書を購入

日本では今日8月15日が終戦記念日なので、太平洋戦争についての真面目な本を読んでみた。この本はかなり以前に見つけて、読むタイミングを待っていた。
太平洋戦争で日本の軍人・軍属が230万人が死亡し、民間人死者80万人と合わせると計310万人にものぼる。旧帝国陸海軍の幹部たちの無知・無能・無責任さはもはや歴史的事実として明らかにされているけど、一般の兵隊たちの現実は・・・多くの語り部などが活動してきたのだろうけど・・・余り知られてこなかった。
制空・制海権を失った中で作戦域への移動途上での海没死、兵站が破綻し戦闘以前の病死・餓死、無謀な特攻、追い詰められての自殺・自決、さらには投降すら許されず「処置」という名で殺害された兵士たちがいかに多かったことか。
今日の日本の平和と繁栄は、こうした一般の兵士たちの屍の上にある・・・などと、この本を読むとつい説教臭いことを考えてしまうけど、でもね、この平和と繁栄を実現したのは、戦後生まれのわたしたちの努力の結果であること忘れてはいけない。「戦争を知らないお前たちは・・・」と散々言われて育った世代だって、そう捨てたものじゃないと思う。

MOOK「イカロスMOOK 鉄道連絡船のいた20世紀」

イカロスMOOK
鉄道連絡船のいた20世紀

(イカロス出版:2,190円+税)
※古書を購入

以前、青函連絡船について調べたとき、戦前、北海道と南樺太を結んでいた航路があることを知った。気にはなったけど、ずっと放置していたけど、たまに利用する古本屋で、偶然このムックを見つけて思い出した。
青函、宇高、関釜、稚泊の四大連絡船について紹介しているので、稚泊連絡船について、余り多くのページは割かれていなかった。でも、一通りのことは書かれていたし、個人的な興味は満たされた。
最初は小樽と樺太の大泊の間を定期航路でつないでいたけど、稚内まで鉄道が開通すると、すぐに連絡船が開通した。さらにその後、稚内駅から港まで3kmほど鉄道が延ばされた。それだけ需要があったのだろう。
日露戦争で獲得した南樺太を、日本がどう経営していたのか、その一端が垣間見れて面白かった。
この「イカロスMOOK」シリーズ、前に航空機のムックを手にしたことがあるけど、なかなか興味深いラインナップを揃えているようだ。

BOOK「千利休 切腹と晩年の真実」

千利休
切腹と晩年の真実

中村修也著
(朝日新書:amazon:648円)
※Kindle版を購入

中学時代から茶道を習っていて、学生時代は茶道関係の本をいろいろ読んだ。いつも気になったのは、狂信的なまでの千利休崇拝。そして、いま現在の家元制度の都合に合わせた曲解。利休が美化されまくり、三千家の正当性を後付けしようと、明らかに歴史と合わないことも多々あった。
さらに、利休との対比で、秀吉は華美で醜悪とする盲目的な歴史感にも辟易した。わたしは・・・何の根拠もないけど、利休と秀吉は仲良くお茶を楽しんでいたのだと思っている。
ところが、時代は進んで凄い本が出ていた。「わび茶」の起源は利休ではない、さらには利休の切腹すら否定している。
まだ定説として認定されていないので、歴史の教科書が書き換えられるのは先だろうけど・・・ほぼすべて納得できる内容だった。お陰で、ン十年の胸のつかえが取れた気がする。

BOOK「トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち」

トラクターの世界史
人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち

藤原辰史著
(中公新書:860円+税)
※古書を購入

1892年にアメリカで発明されたトラクター。アメリカのように広大な土地のある国であれば、一大革命なのだろうと漠然と思っていた。
スタインベックの『怒りのぶどう』は高校時代に読んだけど、この本で紹介された内容は、ぜんぜん記憶がない。トラクターによる大規模な耕作地拡大が、大地の荒廃を招き、世界恐慌の引き金になったとか、ファシズムの遠因になったというのは・・・なくはないだろうけど、こじつけめいているようにも思う。
ただ、トラクターと戦車は双子のような存在という指摘は、目から鱗だった。いままで、日本の小型トラクターをイメージしていたので、そういう技術的な視点に気がつかなかった。まあ、軍事転用は仕方がないことだとは思う。逆を言えば、GPSやAIによる自動耕作なんかは、軍事技術の民生転用なんだし・・・。

BOOK「なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議」

なぜ必敗の戦争を始めたのか
陸軍エリート将校反省会議

半藤一利編・解説
(朝日新書:amazon:950円)
※Kindle版を購入

第二次大戦時中に「陸軍」の中枢にいた人たちが、1977年に行った座談会をまとめたもの。無謀ともいえる日米開戦に至った経緯などを振り返っているけど・・・戦後かなり時間が経ってからの発言なので、いろいろバイアスの掛かった発言だろうとは思う。
それでも、出席者の多くが本音で話しているのは十分に感じ取れる。その理由は、組織的にバラバラで成り行きでそうなったとか、正しい情報が共有されていなかったとか、当事者意識を感じさせない無責任な言い逃れ的な発言が目立ったから。あまり露骨ではないけど、中国大陸で泥沼にはまったまま太平洋戦争に突入した陸軍への過剰な批判を避け、海軍にだって責任があるという気持ちも感じられた。
読んでいてむなしい気持ちになる本だけど・・・せめてもの救いは、「こうしていたら勝てた」的な発想がなかったことくらいだろう。編集の時点で削除された可能性もあるだろうけど。

BOOK「平成史講義」

平成史講義
吉見俊哉:編集
(ちくま新書:900円+税)

5月1日に改元される前に、平成史云々という本が何冊か出版されていた。あらかじめ天皇陛下のご退位がはっきりしていたからのことだろうけど、このタイミングで歴史をまとめる意義があるのかという疑問もあるけど、とりあえず一冊読んでみた。
平成時代は自然災害が多かったとはよくいわれるけど、インターネット、グローバル経済、地下鉄サリン事件、バブル崩壊、民主党政権、大震災、原発事故・・・みんな平成の出来事。いろいろなことがあった。
この本では、各分野毎に識者が短文で平成をまとめているけど、共通していることは・・・戦後の枠組みというか、昭和時代に上手くいっていた仕組みがみんな崩壊して、新しい枠組みを試行錯誤しながら、再構築に失敗した時代というニュアンスが浮かび上がってくる。わたしは、平成になる少し前・・・「Japan as NO.1」なんていわれた時期から、「日本はいまがピークで、今後は降り坂」と思いながらいままで生きてきたので、大筋では異論はないけ。でも、昭和の後半、あるいは戦後って、そんなに上手くいった時代なんだろうか? 戦後の復興、高度経済成長、公害の克服などはあったけど、「むかしは良かった」的な発想でちょっと無批判すぎるんじゃないかという気もする。

BOOK「素顔の西郷隆盛」

素顔の西郷隆盛
磯田道史著
(新潮新書:820円+税)
※古書を購入

西郷隆盛に限らず、幕末維新期に活躍した偉人は、後に脚色された人物像が何度も繰り返して小説やドラマなどで描かれ、どうにも眉唾な人物像がまかり通ってきた。さらに、ゲームやアニメに至っては、もはやオカルト的な存在といっても過言ではない有様。創作ものだから鵜呑みにする方がおかしいわけだけど。
そういうイメージを払拭しようと、こういう本を読んだわけだけど・・・読んでみると、意外に小説などがまともな人物像を描いていたようにも思える。西郷隆盛は一度下野して、西南戦争で明治政府にたてついた存在だから、その後の脚色が少なかったのかも知れない。
そして改めて思ったことは、幕末維新期にこういう人物がのし上がって、日本の舵取りの一端を担ったことのスゴさ。これは本人の才覚だけでなく、時代の綾というものなんだろうなぁ。