BOOK「江戸の旅文化」

江戸の旅文化
神崎宣武著
(岩波新書:780円+税)
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お伊勢参りについて書かれた本は何冊か読んだことがあり、江戸時代の旅行ブームについてはそれなりに読み知っている。でも、お伊勢参り以外の旅はどうだったのだろうと、この本を読んでみたけど、この本も前半はお伊勢参りについて書かれていた。江戸時代の出版物や浮世絵など、資料が豊富だから仕方がないだろうけど。
後半は大山詣、富士登拝、善光寺や厳島神社といった寺社詣について、そして湯治について書かれていた。なぜか金比羅参りは扱われていない。霊場の巡礼も取り上げられていなかったけど、基本的には同じようなものだったのだろう。
講をつくって代表者を行かせたり、代参させたりしていたくらいだから、誰でも気軽に旅に出られたわけではないだろうけど、日本中にたくさんの霊場や寺社があるわけで・・・江戸の人間はちゃんと働いていたのかと心配になる。いちばん自由に出歩けなかったのは、武士と花魁だろうから、役人と夜の花たちは一生懸命に働いていたのだろうけど^^;;

BOOK「日本海 その深層で起こっていること」

日本海
その深層で起こっていること術

蒲生俊敬著
(講談社ブルーバックス:amazon:929円)
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比較的最近、NHKで日本列島が生まれたメカニズムの最新研究を紹介した番組を見た。2000万年前、ユーラシア大陸の東端に亀裂が入り、少しずつ広がり、やがて日本海となって、今日の日本列島が形成された。だから日本でも、恐竜の化石が発見されるのだという。
この本は、そんな日本海の成り立ちから、海流の動きや海水の性質、気象、歴史や日本人の暮らしとの関わりといった広範な研究成果を紹介している。
著者自身が日本海の調査を行った経験なども交えているけど、その現場の様子なども詳しく紹介してくれれば、より面白い読み物になったように思う。ただ、当時と現在では、調査手法や技術が違うので、詳細は省いたのだろうと思うけど。
さらに、ブルーバックスというレーベルにもかかわらず、科学的な解説に読み応えがない感じがする。海水の垂直方向の熱塩循環についてがメインテーマで、温暖化ガスによる気候変動の予兆が日本海に見られはじめているという警鐘が最も言いたいことというのは理解できるけど。

BOOK「アイヌの歴史 海と宝のノマド」

アイヌの歴史
海と宝のノマド

瀬川拓郎著
(講談社選書メチエ:1,600円+税)
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以前、アイヌについて何冊か本を読んだときに購入して、途中まで読んで放置していた。中断していた理由は特にない。文章も読みやすく、わかりやすい本ではあるけど、途中で飽きてしまったからかも^^;;
この著者のアイヌ研究が学界でどのような位置づけなのか、主流なのか異端なのかもぜんぜん知らないけど、ひとつだけ、わたしのいままでのアイヌ観を覆すことが書かれていた。なんとなく、アイヌ社会は原始共産制のような感じの階級のない社会だったろうと思い込んでいた。農耕社会ではないから、社会的分業も必要がないし、日本的なムラ社会のリーダーも必要がないと思い込んでいたわけだけど・・・この本によると、貧富の差がある階級社会であったらしいとのこと。だからどうということはないけれど。

BOOK「オホーツクの古代史」

オホーツクの古代史
菊池俊彦著
(平凡社新書:760円+税)
※古書を購入

仕事の資料としてではないけど、なんとなく興味の流れで読んでみた。
正直なところ、北海道で生まれ育ったけれど、つい先日までオホーツク海を見たことがなかった。当然ながら、印象は薄かった。学校で習う日本史は、縄文・弥生・古墳時代・・・と、畿内や九州を中心としたもので、北海道(蝦夷地)はなかなか出てこない。日本の外交史という面では、中国大陸や朝鮮半島にばかり向いていて、北方民族との交流という視点で描かれる世界観はまったく学ぶ機会がない。
それでも、一応、二十歳まで北海道にいたので、多少はこうした北方民族との交流があったことだけは知っていた。そして先日、網走市にある北海道立北方民族博物館、網走市立郷土博物館に行き、「オホーツク文化」についても知ったばかり。この本を含めて、いろいろと認識を新たにした。たしかに、地図の角度を変えてみると、オホーツク海は日本列島の北の玄関口なんだよな。

BOOK「繭と生糸の近代史」

繭と生糸の近代史
滝沢秀樹著
(教育社歴史新書:1,000円+税)
※古書を購入

仕事の資料として読んだ本。
江戸時代に本格化し、明治期に日本の主要産業に発展した日本の生糸生産についての歴史本で、「女工哀史」や「あゝ野麦峠」などに描かれた時代の養蚕と生糸について書かれている。とかく、女工たちの悲惨な労働環境について語られることが多いけど、総合的な視点で幅広く語っている。
生糸の輸出は、明治期の日本にとって外貨獲得の主力だった。ヨーロッパの養蚕がカイコの病害で壊滅したせいもあり、日本の生糸は世界を席巻することになるけど、それを支えていたのはけなげに働く女工たちだった。さらに、機械紡織を進めたところにも、日本人の勤勉さが感じられる。
こういう、生糸に関しての歴史本はたくさん出ているけど、一般向けの技術本は全くといっていいほど出版されていない。いまさらということなんだろうけど・・・。
紡糸・紡織機のような機械は、その後の日本の工業的なものづくりの原点ともいえる存在。動作を見ているだけでも面白いし、飽きが来ない。その点、いまのハイテク製品はいまひとつ面白みに欠けるよなぁ。

BOOK「京都を古地図で歩く本 平安京から幕末維新まで“歴史の謎解き”めぐり」

京都を古地図で歩く本
平安京から幕末維新まで“歴史の謎解き”めぐり

ロムインターナショナル編
(KAWADE夢文庫:amazon:620円)
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平安京/京都の歴史を解説した本としては、内容に不満はない。とくに幕末期あたりは、詳しく書かれていて読み応えがあった。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んでいたので、そう言えばと思い描く部分もあり、面白く読んだのだけど・・・。
読んだ・・・というところが問題で、あくまでも歴史解説書にすぎなかった。残念なことに、書名から期待していた古地図があまり掲載されていない。京都は暑いし、有名な観光地は混雑しているし、ホテルも予約しづらいので、実際に行きたいとは思わないけど・・・Googleマップと見比べながら楽しもうという目論見にはほとんど役に立たない本だった。今回はKindle版を購入したので、購入時には気づかなかったけど・・・元々が文庫本というサイズでは、そもそも期待するべきではなかったのかも知れない。

BOOK「講座・日本技術の社会史 第三巻 紡織」

講座・日本技術の社会史 第三巻
紡織

編集委員:甘粕健、網野善彦、石井進、黒田日出男、田辺昭三、玉井哲雄、永原慶二、山口啓二、吉田孝
(日本評論社:2,900円+税)
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仕事の資料として読んだ本。
なかなか手ごろな本が見つからず、いろいろ探したあげく、ようやくこの本に行き当たった。繊維産業は、かつて日本の花形産業で、明治期以降、外貨をたくさん稼ぎ出していたにもかかわらず、いまではまともな出版物を探すのに苦労するとは・・・。
この本は、先史時代からの日本の製糸、織物について解説していて、すごい本であることに間違いはないんだけど・・・わたしが必要とした情報は近代の製糸・紡績についてなので、後半3分の1くらいしかページが割かれていなかった。この本は近代の機械制紡糸・紡績への移行まで。大正・昭和期についてはまったく触れられていない。しかも、残念ながら、この本のシリーズでは紡織に関する続巻はない。
戦後の化学繊維の時代の資料を別途探さないといけないかも知れない・・・。
巻末の「特論」の「日本の織機」の項が、意外に役に立った。