BOOK「世界を駆けた博物学者 南方熊楠」

世界を駆けた博物学者 南方熊楠
(南方熊楠顕彰会:500円)

仕事の関係でいただいた冊子。和歌山県田辺市にある「南方熊楠顕彰会」がまとめたもので、顕彰会のHPからも購入できる。A5版64ページ。地方の博物館などが発行したこういう資料は現地に行かないと手に入らない。現地に行っても、タイミングが悪いと売り切れだったりする。
南方熊楠は、昨年、生誕150周年だったので、いろいろメディアでも取り上げられたし、イベントなども行われた。わたしも何冊か本を読んだし、昨年12月から開催された国立科学博物館企画展「南方熊楠-100年早かった智の人-」を見に行った。
南方熊楠顕彰会は熊楠研究の中心となる存在で、博物館というよりは研究所の性格が強いようだ。近年、その評価が変わってきている熊楠だけど、ここでの研究成果が元になっているのだろう。
この冊子は、2017年10月1日の第4刷で・・・2006年の初版以降の改版はないようだけど・・・科博の企画展での印象と異なる内容はなさそうなので、それなりに新しい研究成果も盛り込まれているのだと思う。

BOOK「1688年 バロックの世界史像」

1688年
バロックの世界史像

John E. Wills Jr.著
ジョン・ウィルズ、別宮貞徳:監修
片柳佐智子、鈴木忠昌、徳植康子、中尾ゆかり:訳
(原書房:2,800円+税)
※古書を購入

出版時、それなりに話題になった本で、世界中の国や都市の1688年時点の姿を並列的に描いたユニークな歴史本。なぜ1688年なのかは不明。大きな事件や出来事は起きていないし、特別な年とも思えないけど・・・読後の推測では、世界の主要な地域が世界史という形で本格的につながりはじめた時代の代表・・・言い換えれば、欧米人に全世界が認識された時代だからだろう。この時期、オランダやイギリスの東インド会社がヨーロッパとアジアを結び、北米西海岸からマニラまでの航路も開かれ、オーストラリアを含む全世界が結ばれていた。
教科書的に地域史をたどっていくのとは全く違う感覚で、いろいろ発見があったりするけど・・・けっこうわかりにい。予備知識がなく、馴染みのない地域の状況を把握するのに一苦労する。
1688年・・・北米では欧米諸国が争うように領土を広げ、アフリカではポルトガル人があらゆる手段を駆使して奴隷をかき集めていた。インドではムガル帝国とイギリスが戦争状態。ロシアが太平洋岸に迫り、清朝との国境が画定されようとしていた。パリではヴェルサイユ宮殿でルイ14世が贅を尽くし、イギリスではニュートンが『プリンピキア』を出版。宗教が影響力を弱め、錬金術から科学が誕生しはじめていた。
1688年は、日本でいうと貞享5年/元禄元年。江戸幕府は犬将軍・徳川綱吉の時代。すでに鎖国状態が完成し、日本は長崎のみで海外とつながっていた。元禄といえば、江戸文化が最初に盛り上がった頃で、当時の金沢・江戸・長崎について触れられている。人口10万人の金沢は、世界の20大都市のひとつに数えられるという。文化面では井原西鶴と松尾芭蕉を取り上げている。他の地域のことはわからないけど、日本に関する記述は、偏見なく描かれていると感じだ。

BOOK「大英博物館展 100のモノが語る世界の歴史」図録

東京都美術館(2015年6月)と神戸市立博物館(2015年9月)で観た企画展の図録。たまたま古本屋で見つけ、安かったので購入した。新品同様の美品で、600円(税込)は買い得だった。
上野でも神戸でも、どちらも混雑していて、じっくり展示を見る余裕すらなかった。2回観たので、計40点くらいに絞り込んで、気になるものだけ順番待ちをして観たはずだけど、改めて図録を見ると、意外にもよく憶えていることに驚いた。やっぱり、実物を直に見るときの印象は強いらしい。
当日スルーしてしまった品々も改めて確認すると、スルーした理由まで思い出せた。日本人であるわたしには、やはり西洋の歴史や文化に馴染みが薄く、厳選されたであろう100点の中でピンとこないものがけっこうある。図録を読むと、その展示品にどういう歴史を語らせたかったのかが解り、なるほどなとは思う。それでもやっぱり、その展示品から感じる存在感なんかは、ヨーロッパ人のそれとは違うのだろう。こればかりは文化的背景が違うのだから仕方がない。
日本から選ばれたのは「縄文土器」。世界最古の土器文化だから、これは納得がいく。他にはないのかという気もするけど、ありそうでいて意外にない。ユーラシア大陸の端っこで、あまり世界との関わりが少ないのは確かだし・・・。
それにしても、大英博物館、行ってみたいなぁ。1週間くらい通って、じっくり見たいものだが・・・。

BOOK「天文の世界史」

天文の世界史
廣瀬匠著
(集英社インターナショナル新書:amazon:734円)
※Kindle版を購入

人間と天体との関係、地球と星々との関係を、大まかな天文学の発展に合わせた流れで・・・太陽・月・地球、惑星と太陽系、星座と恒星、流星・彗星・超新星、天の川・星雲星団・銀河、宇宙観という対象の広がりに応じて、各項目の歴史的解説を行っている。その当時の天文学者が何を知りたかったのか、何をどう認識していたかという視点で、天文学の流れを伝えている。
古代エジプト・古代インドでは・・・などといわれても、あまりピンとこないけれど・・・政治や宗教、農業などにとって、天文学は密接なものだった。でも、科学が進歩するにつれ、どんどん遠い存在になっていくのを実感した。先端科学の常として、宇宙がブラックボックス化してしまったともいえる。まあ、東京に暮らしていると、夜空を見上げる機会もないし、そもそも星がほとんど見えないからなぁ。
個人的には閏年が気になった。現在のグレゴリオ暦では、一年は365日。ただし、4の倍数の年は閏年として366日。その上で、100の倍数の年は閏年としないけど、400の倍数の年は閏年にする。100年単位での特例だから、わたしの一生の中では西暦2000年が該当したけど・・・400の倍数だから普通に閏年だった。次の例外は2100年・・・わたしはとっくに死んでいいるだろう。

BOOK「ハプスブルク家」

ハプスブルク家
江村洋著
(講談社現代新書:800円+税)
※古書を購入

ヨーロッパの歴史は苦手だ。ぐちゃぐちゃでよくわからないというのが正直なところ。でも、日本のようにほぼ同じ地域がひとつの国であり続けた歴史を持つ国の方が珍しいわけで・・・そもそも国単位で歴史を考えること自体が、ヨーロッパ史を考える上では間違いなんだろうと思う。そういう意味で、この本を読んでみたわけだけど・・・。
ハプスブルク家は、ビスマルクによってドイツの表舞台から駆逐されたという印象があったので、ドイツとオーストリアあたりの大貴族という印象があった。でも、中世以降、スペインやハンガリー、ボヘミアを含む中部ヨーロッパの広大な地域で君臨してきた。だから、ヨーロッパ史を理解する上で避けて通れないのだけど・・・やっぱりよくわからないというのが、読んだ後の印象だ。しかも、戦争で征服したというのではなく、大半が政略結婚で領土を広げたので、元をたどると・・・正直いって訳がわからない。少なくとも、美男美女をたくさん輩出した家柄なのだろう。
あくまでも自称らしいけど・・・カエサル一族にまで遡るという。古今東西、血統の正当性を示すには、過去の偉人にまで遡ってこじつけるのは同じなので、ヨーロッパではローマ帝国の時代にまで遡ることになる。日本でいうと、何々天皇につながるといった感じだろう。

BOOK「大英博物館の話」

大英博物館の話
出口保夫著
(中公文庫:740円+税)
※古書を購入

残念ながら、大英博物館には行ったことがない。でも、日本で開催された持ち出し展は何度か見たことがある。で、個人的にはこの大英博物館と大英自然史博物館にだけは、死ぬまでに一度行ってみたいと思っている。
大英博物館は、長い歴史の中で、大英帝国の勢力の届く範囲で無数の文化財を収集してきた。あるものはコレクションとして寄贈され、あるものは財力に任せて買いあさったりして。当然、植民地化していた中東・インド・中国から、東洋文化の粋を集めている。同時に、日英同盟以来のつながりがあり、敗戦と同時に日本に乗り込んできたイギリス調査隊も、日本文化の逸品を多数集めていった。覇権を極めたという世界史的な動きに乗っている部分もあるけど、やはり、日本の博物館などに比べて根本的な本気度が違うように思う。
大英博物館は途中、大英自然史博物館が分離ししたので、いわば姉妹館の関係。大英博物館最初のコレクションは自然史博物館に移動したから、自然史博物館の方が姉ということかも知れない。
そういえば、昨年春、国立科学博物館で開催された特別展「大英自然史博物館展」の会場で、このふたつの博物館の違いに気づかず来場していた人をけっこう見かけた。大英博物館のつもりで見に来たら、予想と違っていたという・・・^^;