BOOK「トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち」

トラクターの世界史
人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち

藤原辰史著
(中公新書:860円+税)
※古書を購入

1892年にアメリカで発明されたトラクター。アメリカのように広大な土地のある国であれば、一大革命なのだろうと漠然と思っていた。
スタインベックの『怒りのぶどう』は高校時代に読んだけど、この本で紹介された内容は、ぜんぜん記憶がない。トラクターによる大規模な耕作地拡大が、大地の荒廃を招き、世界恐慌の引き金になったとか、ファシズムの遠因になったというのは・・・なくはないだろうけど、こじつけめいているようにも思う。
ただ、トラクターと戦車は双子のような存在という指摘は、目から鱗だった。いままで、日本の小型トラクターをイメージしていたので、そういう技術的な視点に気がつかなかった。まあ、軍事転用は仕方がないことだとは思う。逆を言えば、GPSやAIによる自動耕作なんかは、軍事技術の民生転用なんだし・・・。

BOOK「なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議」

なぜ必敗の戦争を始めたのか
陸軍エリート将校反省会議

半藤一利編・解説
(朝日新書:amazon:950円)
※Kindle版を購入

第二次大戦時中に「陸軍」の中枢にいた人たちが、1977年に行った座談会をまとめたもの。無謀ともいえる日米開戦に至った経緯などを振り返っているけど・・・戦後かなり時間が経ってからの発言なので、いろいろバイアスの掛かった発言だろうとは思う。
それでも、出席者の多くが本音で話しているのは十分に感じ取れる。その理由は、組織的にバラバラで成り行きでそうなったとか、正しい情報が共有されていなかったとか、当事者意識を感じさせない無責任な言い逃れ的な発言が目立ったから。あまり露骨ではないけど、中国大陸で泥沼にはまったまま太平洋戦争に突入した陸軍への過剰な批判を避け、海軍にだって責任があるという気持ちも感じられた。
読んでいてむなしい気持ちになる本だけど・・・せめてもの救いは、「こうしていたら勝てた」的な発想がなかったことくらいだろう。編集の時点で削除された可能性もあるだろうけど。

BOOK「平成史講義」

平成史講義
吉見俊哉:編集
(ちくま新書:900円+税)

5月1日に改元される前に、平成史云々という本が何冊か出版されていた。あらかじめ天皇陛下のご退位がはっきりしていたからのことだろうけど、このタイミングで歴史をまとめる意義があるのかという疑問もあるけど、とりあえず一冊読んでみた。
平成時代は自然災害が多かったとはよくいわれるけど、インターネット、グローバル経済、地下鉄サリン事件、バブル崩壊、民主党政権、大震災、原発事故・・・みんな平成の出来事。いろいろなことがあった。
この本では、各分野毎に識者が短文で平成をまとめているけど、共通していることは・・・戦後の枠組みというか、昭和時代に上手くいっていた仕組みがみんな崩壊して、新しい枠組みを試行錯誤しながら、再構築に失敗した時代というニュアンスが浮かび上がってくる。わたしは、平成になる少し前・・・「Japan as NO.1」なんていわれた時期から、「日本はいまがピークで、今後は降り坂」と思いながらいままで生きてきたので、大筋では異論はないけ。でも、昭和の後半、あるいは戦後って、そんなに上手くいった時代なんだろうか? 戦後の復興、高度経済成長、公害の克服などはあったけど、「むかしは良かった」的な発想でちょっと無批判すぎるんじゃないかという気もする。

BOOK「素顔の西郷隆盛」

素顔の西郷隆盛
磯田道史著
(新潮新書:820円+税)
※古書を購入

西郷隆盛に限らず、幕末維新期に活躍した偉人は、後に脚色された人物像が何度も繰り返して小説やドラマなどで描かれ、どうにも眉唾な人物像がまかり通ってきた。さらに、ゲームやアニメに至っては、もはやオカルト的な存在といっても過言ではない有様。創作ものだから鵜呑みにする方がおかしいわけだけど。
そういうイメージを払拭しようと、こういう本を読んだわけだけど・・・読んでみると、意外に小説などがまともな人物像を描いていたようにも思える。西郷隆盛は一度下野して、西南戦争で明治政府にたてついた存在だから、その後の脚色が少なかったのかも知れない。
そして改めて思ったことは、幕末維新期にこういう人物がのし上がって、日本の舵取りの一端を担ったことのスゴさ。これは本人の才覚だけでなく、時代の綾というものなんだろうなぁ。

BOOK「徳川吉宗 国家再建に挑んだ将軍」

徳川吉宗
国家再建に挑んだ将軍

大石学著
(教育出版江戸東京ライブラリー:1,500円+税)
※古書を購入

吉宗は江戸幕府の八代将軍。時代劇にもたびたび登場する将軍で、歴代将軍の中でも人気のある人物だと思う。これはたぶん、テレビドラマ「大岡越前」の貢献によるものだろう。質素倹約と享保の改革をすすめ、目安箱を設置したとか、中興の祖として歴史の教科書でも多少は目立つ存在だったはず。
でも、中興の祖といわれると言うことは、それ以前がひどく低迷していたわけで・・・あまり低迷していたとは意識してはいなかった。たぶん、吉宗以前は新井白石が財政改革を行った時期だと思うけど、江戸幕府ってずーっと、いつも財政改革ばかりやっていた印象があるけど・・・吉宗の前は、戦国時代からの復興期が終わり、幕藩体制が確立して世の中が安定し、低成長時代になっていたらしい。
吉宗はそんな世の中のシステムをガラガラポンして、時代に合ったシステムに構築し直したわけだけど・・・いまの日本にも似ている点が多い。そういう意味では、戦後日本の中興の祖とでもいうべき、吉宗のような政治指導者が求められているわけだけど・・・残念ながら、いま現在の永田町には見当たらない。

BOOK「五代友厚」

五代友厚
織田作之助著
(河出文庫:620円+税)
※古書を購入

わたしはテレビドラマを全く見ないので、NHKの朝ドラで「五代友厚」がらみのものがあったことすら知らなかった。でも、なんとなく「五代友厚」の名前だけは知っていて・・・でも、何をしたどんな人なのかはよく知らなかった。こういう場合、たいていはネットで調べて満足するけど、手頃な文庫があったので読んでみた。
幕末維新期の薩摩人で、大阪経済に大きな貢献をした人・・・本を読む前の五代友厚の印象そのままの内容だったけど、ずいぶん、人から頼りにされる人だったらしく、人望が厚かったという印象を改めて強くした。
明治政府は東京の発展にちからを注ぎ、上方の没落には目をつむっていた感じがあるから、いくら大阪の復興に貢献しても、ローカルな存在という扱いになってしまったのだろう・・・少なくとも私の印象では。

BOOK「回想の東善作 回顧録とゆかりの人の証言でつづる」

没後50年記念出版
回想の東善作

回顧録とゆかりの人の証言でつづる

北國新聞社出版局編
(北國新聞社:1,389円+税)

仕事の関係でお借りして読んだ本。仕事に直接関係した資料ではないけど、「東善作」という人物に興味を持ったので読んでみることにした。
東善作のことは、先日行った石川県立航空プラザで知った。石川県かほく市の人で、「日本のリンドバーグ」と呼ばれた飛行家だという。
金沢で新聞記者をしていた頃、アメリカの曲芸飛行士アート・スミスを取材したことをきっかけに渡米し、パイロットライセンスを取得した。大正5年というから、個人でライセンスを取得した日本人としては最初期なのではないだろうか。昭和5年には日本人としては初めて、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの三大陸を単独無着陸で横断する快挙を成し遂げた。これが「日本のリンドバーグ」といわれる理由。戦後、人形峠のウラン鉱を発見したのも東善作だという。航空プラザに、彼が使用していたガイガーカウンターが展示されていた。
ローカルな「偉人」かもしれないけど、なかなかアグレッシブな人生を送った人ではあった。

BOOK「日本の空のパイオニアたち 明治・大正18年間の航空開拓史」

日本の空のパイオニアたち
明治・大正18年間の航空開拓史

荒山彰久著
(早稲田大学出版部:2,800円+税)
※古書を購入

仕事の資料として読んだ本。
江戸時代に空を飛ぶことを夢みた浮田幸吉にはじまり、気球による飛行、日本初の動力機飛行の成功、所沢飛行場の開設、国産飛行機の開発と進化。各地で開催された航空ショー。さらには旧日本軍航空隊の設立、航空母艦「赤城」「加賀」の進水・・・。という流れで、わずか18年という短期間で航空機が発達し、民間では郵便飛行会社が設立され、軍事利用もはじまった。
バロン滋野・・・そういえば、こういう人がいたなと・・・。子どもの頃、なにかで読んで名前だけが憶えていたけど、ようやくどういう人なのかがわかった。
寺田寅彦という物理学者・・・どこにでも顔を出すけど、この分野でも出てくるとは。しかも、事故調査という面で存在感があるというのも、なんとなく寺田寅彦らしいという感じがする。
この本は大正期で終わっている。その理由はよくわからないけど、航空史的な意味で何らかの区切りがあったわけではないようだ。この後、日本の航空技術は世界のトップレベルに到達するけど、同時に軍事色が強まり、時代も戦争一色になっていく。

BOOK「ミス・ビードル、高くゆっくりとまっすぐに翔べ 太平洋無着陸横断飛行に挑戦した男たちの記録」

ミス・ビードル、高くゆっくりとまっすぐに翔べ
太平洋無着陸横断飛行に挑戦した男たちの記録

伊藤功一著
(グリーンアロー出版社:1,905円+税)
※古書を購入

先日、青森県三沢市にある「青森県立三沢航空科学館」を見学した。展示の目玉のひとつである「ミス・ビードル号」の復元模型。1931年、青森県三沢市の淋代海岸を離陸したクライド・パングボーンとヒュー・ハーンドンの乗ったミス・ビードル号は、アメリカ本土までの最初の太平洋無着陸飛行に成功した。その後、お礼にアメリカからデリシャス林檎の苗木が贈られ、これを元に品種改良が行われて今日のリンゴ王国青森が築かれた・・・。
大西洋無着陸横断に比べて、圧倒的に認知度が低い。当時の世相なんかもからんで、いろいろ複雑ではあるけど、基本的にはなかなか良い話なんだけどなぁ・・・。
この解説パネルを読んでいて、ふと思い出したことがある。
これって、むかし、学校で習ったことがある! 小学校時代のことのような気もするし、中学か高校での英語の教科書に載っていたような気もする・・・はっきりしない。ネットで調べても情報がない。それでこの本を読んでみたわけだけど、当然ながら、この疑問には解答が得られなかった。
それでも、巻末の「参考文献など」に、『標準国語 六年上』(教育出版株式会社)という教科書の「太平洋をわたった五つのりんご」という文章の名前があげられていた。ここでは「昭和48年」となっているけど、出版社のHPでは「昭和49年度版」にこの文章がある。時期が合わないので、この教科書をわたしが使ったことはない。