BOOK「古典部シリーズ 7 米澤穂信と古典部」

古典部シリーズ 7
米澤穂信と古典部

米澤穂信著
(角川書店:amazon:1,069円)
※Kindle版を購入

大半が対談とインタビューで、短編が一編だけ収録されているだけなのは分かっていたけど・・・前の第6巻『いまさら翼といわれても』があんな終わり方をしたので、続きがどうにも気になった。わたし、気になります状態で・・・単行本からのKindle版なので値段が高いけど・・・もう、買うしかなかった。
ところが、そのKindle版が最悪! 全ページが一枚のグラフィックス状態。表示部の小さなKindle Paperwhiteではまともに読める代物ではなかった。しかたがなく、PCでお行儀よく読むしかなかった。
しかも、残念なことに、唯一の書き下ろし短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」は期待していた続きのお話ではなく、小ネタの短編の続きだった。小学校時代の作文や中学時代の読書感想文が出てきて羞恥に震えるなんていうことは、滅多にないことだけど・・・これだけは言える。人生長ければ、恥また多し。わたしは、高校時代にミニコミ誌を主幹していたんだよなぁ・・・残っていて欲しくないなぁ^^;
企画ものとして、「古典部メンバー4人の本棚大公開」は面白かった。若いうちは、社会での実体験がないから、その人間に影響を与えるのは地域と学校、そして家庭環境が主なもの。同級生であれば地域と学校には差がないから、その友人が読んだ本が分かれば、個性なりを理解する助けになる。だから、わたしは高校の頃、友だちに本棚を見られるのがイヤだったし、逆に友だちの部屋に行ったときには真っ先に本棚をチェックしていた。・・・でも、世の中の大半の人は、「本をほとんど読まない人」なんだけど^^;;
わたしは、基本的に作家が何をどう考えているかとか、どういう人物なのかとかにはあまり興味がない。だから、わずかな短編を読むために、こういう本を買わされるのは、ちょっと気にくわない部分がある。

BOOK「どくとるマンボウ航海記」

どくとるマンボウ航海記
北杜夫著
(新潮文庫:460円+税)
※古書を購入

古本屋で見つけて、あまりの懐かしさに思わず手が伸びてしまった。けっこう新しい版でカバーも新しい。いまでも文庫本として売られているとは思わなかった。
この本を最初に読んだのが中学の時だったか高校の時だったかは憶えていないけど、このシリーズはすべて読んでいた。中でもこの『航海記』がいちばん面白かったという記憶がある。観光旅行で海外に行くのではなく、船医として船で海外の港を渡り歩くというのが新鮮だったし、客船ではなく水産庁の漁業調査船というのも、ふつうの船旅ではなく面白い要素だった。
ただ、40年ぶりくらいに読み返してみて・・・自分が年をとってしまい、情報過多というか、いまではさほど珍しい読み物という感じでもなくなってしまったのは、ちょっとさびしい限り。もちろん、最初に読んだときは、海外旅行を経験する前のことだから、自分も海外に行ってみたいという憧れもあっただろうし・・・。こういう本の影響があったのか、初の海外旅行を含めてちょっと特殊というか、ふつうのパック旅行などで海外に行ったことはほとんどないけど・・・。そういえば、海外ではけっこう鉄道には乗ったけど、船にはあまり乗っていないな・・・。

BOOK「古代インドの神秘思想 初期ウパニシャッドの世界」

古代インドの神秘思想
初期ウパニシャッドの世界

服部正明著
(講談社現代新書:420円)

昭和59年に購入して読んだ本。自炊したPDFを読み返した。・・・昭和59年というと、社会人になって数年後のことで、こんな本を読んだことがあったことすらずっと忘れていた。
でも、いまから10年ほど前にこんなことがあった。客先に打ち合わせに行き、新しい担当者ですと若手のOLさんを紹介された。その子が、某大学の哲学科でインド哲学を専攻していたと自己紹介したので、ついなにげなく「リグ・ベーダとか・・・ヴラフマンとか・・・ですか?」などと口走ってしまった。正直なところ、インド哲学を専攻していた人に初めて会ったので、そう言ったら、「わたしも、一般の人が素でこういう単語を口にするのを初めて見ました」と返された。そうか、一般人か・・・と思ったことがある。まあ、こういう出来事があったのは、たぶん、この本を読んでいたからだと思う。
さて、読み直してみて、ブラフマン=アートマンなのだとかいわれても・・・やっぱり、ピンとはこなかった。そもそも、たぶん、30年前に読んだときにも、ピンときてはいなかったのだと思う。
哲学、あるいは思想というカテゴリーに分けたいところだけど、そういうカテゴリーを設けていないので、やむなく「古典」に分類して置いた。

BOOK「ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く」

ルポ トランプ王国
もう一つのアメリカを行く

金成隆一著
(岩波新書:860円+税)
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トランプ大統領が誕生してしばらく経ったけど、いまのところ、これといってめぼしい成果、というか変革は起きていないように思う。政府の閣僚すら埋められず失速しはじめたともいえるし、相変わらず狂気めいた言動を維持しているともいえる。
この本は、トランプ大統領を支持したラストベルト地帯、アメリカ中央部の有権者の声を集めたルポルタージュだけど・・・豊だったアメリカ中産階級が没落しはじめ、むかしは良かったとばかりに既存の政治を否定し、勇ましいことを言っているトランプに投票しただけ・・・なのか。結局、どうしてトランプ大統領が誕生したのか、よく分からなかった。日本でいえば、高度成長期やバブル期の幻影を追いかけているという感じなのだろうか?
でも、これだけは分かった。アメリカ社会は確実に格差を大きくしながら、分断された社会を形成してしまったということ。大統領選挙の結果、分断されたのではなく、分断されていたことが顕在化しただけのことだということ。さらにいうなら、トランプ大統領には、この格差社会、分断された社会を正す方策はなさそうだ。

BOOK「竜馬がゆく(八)」

竜馬がゆく(八)
司馬遼太郎著
(文春文庫:629円+税)
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この小説もこれが最終巻。つまり、勤王討幕の山場ではあるけど、志半ばで龍馬は殺されてしまう。ふつう、どんなに危機的状況でも、ヒーローは生き残る。生き残るからヒーローともいえる。でも、竜馬だけは、死んだ後もヒーローであり続けている・・・。
この巻は「大政奉還」の仕込みから実現までと、並行して「錦の密勅」は土佐・長州に硬化されるかのタイムレース状態。徳川慶喜が体制の奉還を決心した直後に、密勅が出されたが、これは無効。叩くべき幕府が消滅してしまったから。
大政奉還という無血革命が成り、竜馬の最後の仕事は新政府づくり。八分までは自分で行い、残りは田のものに任せるという思想で、竜馬自身は新政府には参加する気はなかった。「この仕事が片付いたら、海に戻るんだ」という龍馬の言葉は、いまでいえば、明らかな「死亡フラグ」に違いない^^;;
なるほど、坂本竜馬も偉業については納得した。死んでしまったから維新後の活躍がなかったことで、中途半端な印象を抱いていたらしい。たしかに竜馬の存在は巨大だったけど・・・かれこれ150年も過ぎた今日、高知県はいまだに「坂本竜馬」で発展が止まってしまっているような気がするといったら、彼の地の人々に失礼だろうか。
<完結>

BOOK「竜馬がゆく(七)」

竜馬がゆく(七)
司馬遼太郎著
(文春文庫:552円+税)
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明治維新の中心的な働きをした藩は、薩長土といわれるけど、ここまでは脱藩浪人が活発に動いていただけだった土佐藩がようやく動きはじめた。
船を持たない商船会社は惨めなものだけど、どうにか船を手に入れ、さらに土佐藩の支援を受け海援隊へと発展させた。でも、長崎で綿を仕入れて持ち船で運び、上方で売るという仕組みは、北前船あたりとそう大きな違いがない。利益は上がるけど、竜馬的な独創性を感じられないのだが・・・。そういえば、この小説に北前船はいまのところいっさい触れられていない。でも、竜馬には船についての運がない。汽船・いろは丸まで、積み荷ごと最初の航海で沈めてしまった。
時勢が来て、竜馬は本腰を入れて動きはじめたけど、最後に「大政奉還と「船中八策」。ここにも勝海舟という偉人が見え隠れしている。竜馬って、海舟に見えない糸で操られていたんじゃないかと疑いたくなる。
余談だけど・・・かねてから不思議だったことがある。岩崎弥太郎がどうやって土佐藩の財産を受け継いだのか? 維新のどさくさ紛れで、家老・後藤象二郎が勝手に与えたものらしい。見返りとして藩の借金をすべて押しつけたらしいけど^^;;

BOOK「竜馬がゆく(六)」

竜馬がゆく(六)
司馬遼太郎著
(文春文庫:552円+税)
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この巻は竜馬の薩摩行から亀山社中の設立、薩長同盟、直後に寺田屋で手負いとなり、お竜を連れて薩摩に下り長崎へ。さらに第二次長州征伐に参戦したところまで。
薩長同盟の成立は、竜馬の最大の功績だと思うけど、予想以上の活躍だった。ついでに、蒸気船の威力というか、交通インフラの重要性もよくわかった。でも、第二次長州征伐の直前、京阪は竜馬をターゲットとして厳重な警備がしかれていた。やっぱり、ここに来て竜馬は本当に大物なのだと納得した。
お竜という女性があまり好きではないけど、竜馬はついにお竜と一緒になった。この時代から「白衣の天使」効果は存在していたらしい^^;; 日本初の新婚旅行といわれる竜馬・お竜の塩浸温泉行きは、よくクイズ番組で出題されたりして知っていたけど、基本的には怪我の療養だったのか、これは知らなかった。
第二次長州征伐の様子は、昨年、北九州市立いのちのたび博物館で特別展「関門幕末維新伝」を見ていたので、それなりに理解していた。なかなか面白い巻だったけど、ある意味ではこれが坂本竜馬最大の山場なんだろう。