BOOK「人類進化の700万年 書き換えられる「ヒトの起源」」

人類進化の700万年
書き換えられる「ヒトの起源」

三井誠著
(講談社現代新書:800円+税)
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人類学の研究者ではなく、科学ジャーナリストが人類史を紹介した本なので、非常に読みやすい。ただ、専門的につっこんだ部分を知りたい人には物足りないかも知れない。
個人的な偏見かも知れないけど・・・いわゆる研究者といわれるひとたちは、自ら研究せず伝えるだけのジャーナリストを一段低く見る傾向があるようだけど・・・この本は、ジャーナリストだからこそ書けた本だと思うし、かなり野心的にまとめられていると思う。
たとえば、確定的なことが少なく、様々な仮説がモザイクのように絡まり合っている人類学にあって、ジャーナリストは自説を主張する必要がないので、様々な学説や仮説の確かさ・不確かさを評価・判定していること。
同時に、とらわれるべき自説がないので、読者が知りたいであろうことを、ちゃんとつなげて説明していること。いわゆる研究者が書いた本は、学術的に正しいマナーで書かれ、曖昧さを排除して書かれているんだろうけど、自分の研究分野や自分の主義主張にとらわれ、読み手であるこちらの期待に応えてくれないことが多々ある。それに編集者が本を売りたい一心で、内容と合致しないタイトルを付けたりするので・・・。
そうはいいながら、あくまでも非常によく勉強したジャーナリストの認識で書かれたものだから・・・いわゆる研究者にいわせると、いろいろつっこみどころもあるのだろうとは思う。

BOOK「核DNA解析でたどる 日本人の源流」

核DNA解析でたどる
日本人の源流

斎藤成也著
(河出書房新社:1,400円+税)

アフリカで誕生し、世界各地に移動していったホモ・サピエンスが、日本にたどり着くまでの毛色など、最新のDNA研究の成果は説得力がある。アフリカからバイカル湖あたりを経て中国華北地方、そして日本へ。ずいぶん長い旅だけど、その道筋がちゃんとDNAという証拠で示されている。サブタイトルであえて「核DNA」としているのは、ミトコンドリアDNA研究と明確に区別したかったからだろうと思う。
という内容の前半は良い。でも、日本人の起源を考察する後半は、いきなり説得力を失ってしまった。著者の新説として日本列島には3つの渡来人があったとする「三段階渡来モデル」を展開している。ざっくり言ってしまうと、従来から言われている朝鮮半島経由の渡来人を二つに分け、最初は漁労を中心とした渡来人、次いで農耕稲作を伝えた渡来人としている。
でも、考古学的考証が曖昧で、論拠が今イチよくわからない。ただの推測じゃないのかと思われる部分もある。たんなる文章表現上の曖昧さなのか、理論的に煮詰められていないのか、素人目には判断が付かない。読むぶんにはとても面白かっただけど、ちょっと残念だ。

BOOK「日本人になった祖先たち DNAから解明するその多元的構造」

日本人になった祖先たち
DNAから解明するその多元的構造

篠田謙一著
(NHKブックス:920円+税)
※古書を購入

2007年に出版された本。NHKブックスなので、きっと、NHKスペシャルかなにかで番組化されたないようだろうと思う。こういう内容の番組は録画してでも見るようにしているから、たぶん見たのだと思う。
アフリカで誕生したホモ・サピエンスがどのようなルートをたどり、日本にたどり着いたか。縄文人がどのような人類なのか今ひとつはっきりしないけど、縄文人が定住していた日本列島に稲作文化を持った渡来人が渡ってきて、現代日本人を形作ってきた流れを、DNA研究で解き明かしているわけだけど・・・DNA解析技術は文字通り日々進化しているので、すでにこの本では最新の研究成果がいろいろこぼれているのだろうけど、アウトラインは十分にわかる。
弥生時代の渡来人は意外と小規模で、小規模ながらも混血化によっていDNAが急速に拡散していくらしい。でも、当時の人口密度、人々の移動の頻度、交流のかたちなど・・・学術的にはわかっている、のかもしれないけど、わたし個人としてピンと来ていないので、想像のしようもない。

BOOK「ヒト 異端のサルの1億年」

ヒト
異端のサルの1億年

島泰三著
(中公新書:920円+税)
※古書を購入

人類学の本を読むと、いつも消化不良になる。わずかな発掘資料から推測を重ねて、わかっていないことが多いのを良いことに、かなり我田引水的に自説を展開していることが多いから。同じようにこの本も消化不良を起こした感じ^^;; ただし、この本の場合はいままでに読んだ本とは少し意味合いが違う。
オランウータンからはじまり、ゴリラ、チンパンジーといったサル、そしてアルディピテクス、アウストラロピテクス、ホモ・エレクトゥス、ネアンデルタール、ホモ・サピエンスへとサルから人類へと考察を並べているけど、ただ並べただけで著者の主張がない。考察も非常に浅い。各項目単独ならそれなりに読んだ感じはするけど、それを串刺しにする部分の考察がお粗末すぎて、この本でいちばんの消化不良に陥ってしまった。
生煮えの食材を順に食べさせられて、お腹を壊したような読後感・・・。結局、サブタイトル通り、裸のサルという異端さを書きたかっただけなのか? だとしたら、著名を『ヒト』ではなく、『サル』にした方が良かった。

BOOK「国立科学博物館 特別展 世界遺産 ラスコー展 LASCAUX The Cave Paintings of the Ice Age」図録

lascaux_zuroku先日、上野の国立科学博物館で見てきた「ラスコー展」の図録。
クロマニヨン人の描いた壁画ではあるけれど、ある意味では美術作品ともいえるような内容なので図録は忘れることなく購入した。とはいえ、写真集ではなく、科博の特別展の図録なので、展示に即して一連の科学的解説も収録されている。
展示では、大規模な復元模型でいくつかの壁画が再現されていたけど、図録で壁画を見て、改めて思った。
ラスコーのクロマニヨン人は、いったい何のためにこんなに夢中になって壁画を残したのだろう? 展示でも、その理由はわからないとなっていた。考古学者はよくわからないことを、すぐに「宗教的儀式」のためとかいって誤魔化してしまうけど、はっきり不明だといっているところは好感がもてる。展示を見た瞬間の、わたしの第一印象は・・・クロマニヨン人たちはマンガ家になりたかったんだろうな、というものだったけど、それは冗談しても、これだけはいえる。これを描いたクロマニヨン人たちは、かなり強烈な創作欲のようなものに突き動かされていたんだろうと。
A4変型判164ページ、フルカラー
価格:2500円

BOOK「アイヌ学入門」

ainugakunyuumon-186x300アイヌ学入門
瀬川拓郎著
(講談社現代新書:amazon:756円)
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高校を卒業するまでは北海道に住んでいたので、決して身近な存在ではなかったけれども、アイヌに関する知識はそれなりにある。白老や函館の博物館なども訪れたことがある。
でも、何十年もむかしのことなので、不正確な知識が相当含まれているはず。わたしが子どもの頃、アイヌ民族は白人に分類され、極東の狭い地域に人種島として分布している、などという説がまかり通っていた。しかし現在では、遺伝子解析やミトコンドリアDNAなどの研究から否定されているらしい。
さらに、わたしたちが一般にイメージするアイヌ文化は、江戸時代末期から明治期にかけて収集された資料や研究によるもので、和人との交易や交流に大きく依存するようになってからのものだとこの本で知った。アイヌ民族・文化の歴史を考えれば、縄文時代から面々と続いてきたわけで、他民族の影響など時代によって変遷があるのは当たり前。こういう歴史的時間軸を意識した説明で、いままで見えていなかったたくさんの物事に気づかされた。
他にもいろいろ思うところ、思い出したところ、不思議に思っているところ、そして現実にふれあったアイヌ民族の人々を思い返したところなど、いろいろ思うところはあったけど、ここで書くべき話ではないな^^;;