BOOK「女帝推古と聖徳太子」

女帝推古と聖徳太子
中村修也著
(光文社新書:700円+税)
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日本史も研究が進むにつれ、むかし学校で習った姿とはいろいろ違ってきている。この本は、どうして推古が即位して、聖徳太子は即位しなかったとかという謎を考察している。読んだ限りは納得するしかないけど・・・日本史の中で初の女性天皇である推古天皇、そして「十七条憲法」「冠位十二階」を定めた聖徳太子(厩戸皇子)はテストに必ず出る項目なので、中学生でも知っている名前だ。でも、習ったときの記憶・印象とはやっぱりいろいろ違っている。ちなみに、この本は2004年に出た本なので、最新の研究ともズレがあるかも知れない。
わたしの世代であれば、聖徳太子はお札の肖像画でなじみ深いけど、あの肖像画もいまでは聖徳太子の姿ではないとされ、教科書でも「伝・聖徳太子」と曖昧に表現されているらしい。次の新しい紙幣の肖像画の人選が既に発表されているけど・・・さらに将来も、聖徳太子が復活することはないだろうな。いい肖像画だと思うけど。

BOOK「千利休 切腹と晩年の真実」

千利休
切腹と晩年の真実

中村修也著
(朝日新書:amazon:648円)
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中学時代から茶道を習っていて、学生時代は茶道関係の本をいろいろ読んだ。いつも気になったのは、狂信的なまでの千利休崇拝。そして、いま現在の家元制度の都合に合わせた曲解。利休が美化されまくり、三千家の正当性を後付けしようと、明らかに歴史と合わないことも多々あった。
さらに、利休との対比で、秀吉は華美で醜悪とする盲目的な歴史感にも辟易した。わたしは・・・何の根拠もないけど、利休と秀吉は仲良くお茶を楽しんでいたのだと思っている。
ところが、時代は進んで凄い本が出ていた。「わび茶」の起源は利休ではない、さらには利休の切腹すら否定している。
まだ定説として認定されていないので、歴史の教科書が書き換えられるのは先だろうけど・・・ほぼすべて納得できる内容だった。お陰で、ン十年の胸のつかえが取れた気がする。

BOOK「素顔の西郷隆盛」

素顔の西郷隆盛
磯田道史著
(新潮新書:820円+税)
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西郷隆盛に限らず、幕末維新期に活躍した偉人は、後に脚色された人物像が何度も繰り返して小説やドラマなどで描かれ、どうにも眉唾な人物像がまかり通ってきた。さらに、ゲームやアニメに至っては、もはやオカルト的な存在といっても過言ではない有様。創作ものだから鵜呑みにする方がおかしいわけだけど。
そういうイメージを払拭しようと、こういう本を読んだわけだけど・・・読んでみると、意外に小説などがまともな人物像を描いていたようにも思える。西郷隆盛は一度下野して、西南戦争で明治政府にたてついた存在だから、その後の脚色が少なかったのかも知れない。
そして改めて思ったことは、幕末維新期にこういう人物がのし上がって、日本の舵取りの一端を担ったことのスゴさ。これは本人の才覚だけでなく、時代の綾というものなんだろうなぁ。

BOOK「徳川吉宗 国家再建に挑んだ将軍」

徳川吉宗
国家再建に挑んだ将軍

大石学著
(教育出版江戸東京ライブラリー:1,500円+税)
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吉宗は江戸幕府の八代将軍。時代劇にもたびたび登場する将軍で、歴代将軍の中でも人気のある人物だと思う。これはたぶん、テレビドラマ「大岡越前」の貢献によるものだろう。質素倹約と享保の改革をすすめ、目安箱を設置したとか、中興の祖として歴史の教科書でも多少は目立つ存在だったはず。
でも、中興の祖といわれると言うことは、それ以前がひどく低迷していたわけで・・・あまり低迷していたとは意識してはいなかった。たぶん、吉宗以前は新井白石が財政改革を行った時期だと思うけど、江戸幕府ってずーっと、いつも財政改革ばかりやっていた印象があるけど・・・吉宗の前は、戦国時代からの復興期が終わり、幕藩体制が確立して世の中が安定し、低成長時代になっていたらしい。
吉宗はそんな世の中のシステムをガラガラポンして、時代に合ったシステムに構築し直したわけだけど・・・いまの日本にも似ている点が多い。そういう意味では、戦後日本の中興の祖とでもいうべき、吉宗のような政治指導者が求められているわけだけど・・・残念ながら、いま現在の永田町には見当たらない。

BOOK「五代友厚」

五代友厚
織田作之助著
(河出文庫:620円+税)
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わたしはテレビドラマを全く見ないので、NHKの朝ドラで「五代友厚」がらみのものがあったことすら知らなかった。でも、なんとなく「五代友厚」の名前だけは知っていて・・・でも、何をしたどんな人なのかはよく知らなかった。こういう場合、たいていはネットで調べて満足するけど、手頃な文庫があったので読んでみた。
幕末維新期の薩摩人で、大阪経済に大きな貢献をした人・・・本を読む前の五代友厚の印象そのままの内容だったけど、ずいぶん、人から頼りにされる人だったらしく、人望が厚かったという印象を改めて強くした。
明治政府は東京の発展にちからを注ぎ、上方の没落には目をつむっていた感じがあるから、いくら大阪の復興に貢献しても、ローカルな存在という扱いになってしまったのだろう・・・少なくとも私の印象では。

BOOK「回想の東善作 回顧録とゆかりの人の証言でつづる」

没後50年記念出版
回想の東善作

回顧録とゆかりの人の証言でつづる

北國新聞社出版局編
(北國新聞社:1,389円+税)

仕事の関係でお借りして読んだ本。仕事に直接関係した資料ではないけど、「東善作」という人物に興味を持ったので読んでみることにした。
東善作のことは、先日行った石川県立航空プラザで知った。石川県かほく市の人で、「日本のリンドバーグ」と呼ばれた飛行家だという。
金沢で新聞記者をしていた頃、アメリカの曲芸飛行士アート・スミスを取材したことをきっかけに渡米し、パイロットライセンスを取得した。大正5年というから、個人でライセンスを取得した日本人としては最初期なのではないだろうか。昭和5年には日本人としては初めて、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの三大陸を単独無着陸で横断する快挙を成し遂げた。これが「日本のリンドバーグ」といわれる理由。戦後、人形峠のウラン鉱を発見したのも東善作だという。航空プラザに、彼が使用していたガイガーカウンターが展示されていた。
ローカルな「偉人」かもしれないけど、なかなかアグレッシブな人生を送った人ではあった。

BOOK「幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む」

幕末武士の京都グルメ日記
「伊庭八郎征西日記」を読む

山村竜也著
(幻冬舎新書:780円+税)
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江戸時代の出版事情はなかなかのもので、いまのミシュランガイドのようなグルメ番付がいくつも出版されていた。しかも、江戸版、京都版、大阪版、東海道版といったエリアガイドが作られていた。それだけ外食産業が栄えていたということでもある。
そういう事情は知っていたけど、気になったのは「伊庭八郎」という人物。五稜郭で討ち死にした伊庭八郎と「グルメ」という単語が結びつかなかった。伊庭八郎は幕末の幕臣で、後に五稜郭で最期を遂げた、ということしか知らなかったわけだけど・・・。その数年前、将軍徳川家茂の京都上洛に従ったときの日記が「征西日記」。家茂の時代だから、風雲急を告げるという感じでまだ緊迫してはいなかっただろうけど、伊庭八郎、京都で食べ歩き三昧。
いま、伊庭八郎が生きていてスマホを持っていたなら、SNSでグルメ写真をアップし続けるんだろうな、戦場で自撮りしたりするんだろうななどと、おかしな想像をしてしまうけど・・・あながちあり得ない話ではないだろう。