BOOK「徳川吉宗 国家再建に挑んだ将軍」

徳川吉宗
国家再建に挑んだ将軍

大石学著
(教育出版江戸東京ライブラリー:1,500円+税)
※古書を購入

吉宗は江戸幕府の八代将軍。時代劇にもたびたび登場する将軍で、歴代将軍の中でも人気のある人物だと思う。これはたぶん、テレビドラマ「大岡越前」の貢献によるものだろう。質素倹約と享保の改革をすすめ、目安箱を設置したとか、中興の祖として歴史の教科書でも多少は目立つ存在だったはず。
でも、中興の祖といわれると言うことは、それ以前がひどく低迷していたわけで・・・あまり低迷していたとは意識してはいなかった。たぶん、吉宗以前は新井白石が財政改革を行った時期だと思うけど、江戸幕府ってずーっと、いつも財政改革ばかりやっていた印象があるけど・・・吉宗の前は、戦国時代からの復興期が終わり、幕藩体制が確立して世の中が安定し、低成長時代になっていたらしい。
吉宗はそんな世の中のシステムをガラガラポンして、時代に合ったシステムに構築し直したわけだけど・・・いまの日本にも似ている点が多い。そういう意味では、戦後日本の中興の祖とでもいうべき、吉宗のような政治指導者が求められているわけだけど・・・残念ながら、いま現在の永田町には見当たらない。

BOOK「五代友厚」

五代友厚
織田作之助著
(河出文庫:620円+税)
※古書を購入

わたしはテレビドラマを全く見ないので、NHKの朝ドラで「五代友厚」がらみのものがあったことすら知らなかった。でも、なんとなく「五代友厚」の名前だけは知っていて・・・でも、何をしたどんな人なのかはよく知らなかった。こういう場合、たいていはネットで調べて満足するけど、手頃な文庫があったので読んでみた。
幕末維新期の薩摩人で、大阪経済に大きな貢献をした人・・・本を読む前の五代友厚の印象そのままの内容だったけど、ずいぶん、人から頼りにされる人だったらしく、人望が厚かったという印象を改めて強くした。
明治政府は東京の発展にちからを注ぎ、上方の没落には目をつむっていた感じがあるから、いくら大阪の復興に貢献しても、ローカルな存在という扱いになってしまったのだろう・・・少なくとも私の印象では。

BOOK「回想の東善作 回顧録とゆかりの人の証言でつづる」

没後50年記念出版
回想の東善作

回顧録とゆかりの人の証言でつづる

北國新聞社出版局編
(北國新聞社:1,389円+税)

仕事の関係でお借りして読んだ本。仕事に直接関係した資料ではないけど、「東善作」という人物に興味を持ったので読んでみることにした。
東善作のことは、先日行った石川県立航空プラザで知った。石川県かほく市の人で、「日本のリンドバーグ」と呼ばれた飛行家だという。
金沢で新聞記者をしていた頃、アメリカの曲芸飛行士アート・スミスを取材したことをきっかけに渡米し、パイロットライセンスを取得した。大正5年というから、個人でライセンスを取得した日本人としては最初期なのではないだろうか。昭和5年には日本人としては初めて、アメリカ・ヨーロッパ・アジアの三大陸を単独無着陸で横断する快挙を成し遂げた。これが「日本のリンドバーグ」といわれる理由。戦後、人形峠のウラン鉱を発見したのも東善作だという。航空プラザに、彼が使用していたガイガーカウンターが展示されていた。
ローカルな「偉人」かもしれないけど、なかなかアグレッシブな人生を送った人ではあった。

BOOK「幕末武士の京都グルメ日記 「伊庭八郎征西日記」を読む」

幕末武士の京都グルメ日記
「伊庭八郎征西日記」を読む

山村竜也著
(幻冬舎新書:780円+税)
※古書を購入

江戸時代の出版事情はなかなかのもので、いまのミシュランガイドのようなグルメ番付がいくつも出版されていた。しかも、江戸版、京都版、大阪版、東海道版といったエリアガイドが作られていた。それだけ外食産業が栄えていたということでもある。
そういう事情は知っていたけど、気になったのは「伊庭八郎」という人物。五稜郭で討ち死にした伊庭八郎と「グルメ」という単語が結びつかなかった。伊庭八郎は幕末の幕臣で、後に五稜郭で最期を遂げた、ということしか知らなかったわけだけど・・・。その数年前、将軍徳川家茂の京都上洛に従ったときの日記が「征西日記」。家茂の時代だから、風雲急を告げるという感じでまだ緊迫してはいなかっただろうけど、伊庭八郎、京都で食べ歩き三昧。
いま、伊庭八郎が生きていてスマホを持っていたなら、SNSでグルメ写真をアップし続けるんだろうな、戦場で自撮りしたりするんだろうななどと、おかしな想像をしてしまうけど・・・あながちあり得ない話ではないだろう。

BOOK「近代化遺産と「すごい」日本人」

近代化遺産と「すごい」日本人
「ニッポン再発見」倶楽部編
(知的生きかた文庫:590円+税)
※古書を購入

「富岡製糸場」が世界遺産に登録され、「明治日本の産業革命遺産」が続き、次はこちらもとばかりに日本各地の日本近代化遺産が色めき立っている。いままであまり日の目を見てこなかった産業遺産が注目され、保存されていく意義は認めるけど・・・中には観光地されることを望んでいるだけの声も混ざっていて、どうなんだろうと首をかしげたくなることも多い。
とはいいながら、仕事を含め、日本各地に出向いた割には、わたし自身はこうした産業史遺産をほとんど見たことがない。
この本では、そんな産業史遺産となった各地を紹介しているのかと思いきや・・・メインは人物。明治期の日本の近代化を支えた政財界人、技術者など30人あまりを紹介している。よく知られた人から、あまり知名度のない人までいろいろいるけど、30余人という枠にこの人が入るのかという疑問がわくような人もいたりする。まあ、誰とはいわないけど^^;;

BOOK「世界を駆けた博物学者 南方熊楠」

世界を駆けた博物学者 南方熊楠
(南方熊楠顕彰会:500円)

仕事の関係でいただいた冊子。和歌山県田辺市にある「南方熊楠顕彰会」がまとめたもので、顕彰会のHPからも購入できる。A5版64ページ。地方の博物館などが発行したこういう資料は現地に行かないと手に入らない。現地に行っても、タイミングが悪いと売り切れだったりする。
南方熊楠は、昨年、生誕150周年だったので、いろいろメディアでも取り上げられたし、イベントなども行われた。わたしも何冊か本を読んだし、昨年12月から開催された国立科学博物館企画展「南方熊楠-100年早かった智の人-」を見に行った。
南方熊楠顕彰会は熊楠研究の中心となる存在で、博物館というよりは研究所の性格が強いようだ。近年、その評価が変わってきている熊楠だけど、ここでの研究成果が元になっているのだろう。
この冊子は、2017年10月1日の第4刷で・・・2006年の初版以降の改版はないようだけど・・・科博の企画展での印象と異なる内容はなさそうなので、それなりに新しい研究成果も盛り込まれているのだと思う。

MOOK「南方熊楠の世界」

南方熊楠の世界
(徳間書店タウンムック:714円+税)
※古書を購入

最近、仕事の関係で、いくつかまとめて南方熊楠についての本を読んでいる。
この本はビジュアル主体のムック本なので、読む部分が少なく、情報量としてはちょっと物足りない感じ・・・。でも、ビジュアルはかなり豊富で、本のサイズも大きいので、仕事的には役に立った。
出版されたのは2012年。内容的にもほぼ最新の研究成果が盛り込まれていた。章の立て方など編集方針もわかりやすく、熊楠の入門書としては良くできていた。
ただ、典型的な熊楠像を紹介しているだけなので、他の本を読んだ後では、なにも驚きもなかった。この本が悪いわけではないけど・・・そういう意味では、いちばん最初に読むべき本だったのだろう。

雑誌「kotoba コトバ 南方熊楠 「知の巨人」の全貌」(19号 2015年春号)

正直いって、こんな雑誌があること自体知らなかった。「多様性を考える言論誌」と冠して、英社が年4回発行する季刊誌。読み応えはあるけど、定価で1,440円もする。この号は2015年の春号なので、当然ながら古書を買った。
仕事の関係で、「南方熊楠」についての資料として読んだわけだけど・・・いろいろな著者が様々な視点から文章を寄せて、南方熊楠という「知の巨人」の実像を探し求めている。でも、いかに大特集とはいえ、様々な視点の記事を集めたが故に、かえって熊楠の全体像が捕まえにくい。それでなくても、捉えどころのない巨人なのに・・・^^;;
それでも、最近の熊楠研究の成果・・・脚色された様々な逸話の正しい内容など、いろいろと読んでみた成果はあった。でもなぁ、脚色された南方熊楠の方が断然おもしろくて好きなんだよなぁ^^;;
最後にどーでもいいことだけど・・・表紙の熊楠の写真、いろいろな書籍にも使われていて、熊楠を代表するポートレートだけど、体操の白井健三くんにそっくりだと感じるのは、わたしだけだろうか?^^;;

BOOK「南方熊楠 日本人の可能性の極限」

南方熊楠
日本人の可能性の極限

唐澤太輔著
(中公新書:amazon:756円)
※Kindle版を購入

南方熊楠については多少の知識はあったけど・・・仕事の関係で急きょ読んだ本。手っ取り早く一冊読もうと、Kindle版を購入した。ふつうにamazonで購入しても翌日には届くんだけど、Kindle版電子書籍ならすぐに読みはじめられるから^^
南方熊楠は、偉人というか、巨人というか、まあ、とにかくすごい人という印象だけど、特に大きな業績を残したわけではないように思う。自然科学や民俗学、宗教学といった、よくいわれる分野で顕著な業績があるわけではない。エコロジストの先駆者として祭りあげられている風潮もあるけど、那智、田辺時代の熊楠は狂気がかっていて、わたしのような凡人には、もはや評価しようもない次元なんだよなぁ^^;;
珍しくまじめに感想のようなものを書くなら・・・南方熊楠を理解することは困難だろうけど、正直なところ、“理解するのが怖い” 存在だと感じた。著者はあとがきで、「熊楠の在り方の特異性(そしてそれは、実は決して異常ではなく普遍性を持っていること)を明らかにできた」と自負しているけれど、熊楠を知れば知るほど、わたしには「異常」だと思えてしまう。
ただ、熊楠は破天荒な人物で、多くのおもしろい逸話があったりして、一部には熱狂的なファンがいる。わたしも、南方熊楠という人物のおもしろさを否定はしない。どちらかというと、実像としての熊楠より、“破天荒にキャラ付けされた熊楠” が好きな人間のひとりだと思っている。