BOOK「日本軍兵士 アジア・太平洋戦争の現実」

日本軍兵士
アジア・太平洋戦争の現実

吉田裕著
(中公新書:820円+税)
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日本では今日8月15日が終戦記念日なので、太平洋戦争についての真面目な本を読んでみた。この本はかなり以前に見つけて、読むタイミングを待っていた。
太平洋戦争で日本の軍人・軍属が230万人が死亡し、民間人死者80万人と合わせると計310万人にものぼる。旧帝国陸海軍の幹部たちの無知・無能・無責任さはもはや歴史的事実として明らかにされているけど、一般の兵隊たちの現実は・・・多くの語り部などが活動してきたのだろうけど・・・余り知られてこなかった。
制空・制海権を失った中で作戦域への移動途上での海没死、兵站が破綻し戦闘以前の病死・餓死、無謀な特攻、追い詰められての自殺・自決、さらには投降すら許されず「処置」という名で殺害された兵士たちがいかに多かったことか。
今日の日本の平和と繁栄は、こうした一般の兵士たちの屍の上にある・・・などと、この本を読むとつい説教臭いことを考えてしまうけど、でもね、この平和と繁栄を実現したのは、戦後生まれのわたしたちの努力の結果であること忘れてはいけない。「戦争を知らないお前たちは・・・」と散々言われて育った世代だって、そう捨てたものじゃないと思う。

BOOK「なぜ必敗の戦争を始めたのか 陸軍エリート将校反省会議」

なぜ必敗の戦争を始めたのか
陸軍エリート将校反省会議

半藤一利編・解説
(朝日新書:amazon:950円)
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第二次大戦時中に「陸軍」の中枢にいた人たちが、1977年に行った座談会をまとめたもの。無謀ともいえる日米開戦に至った経緯などを振り返っているけど・・・戦後かなり時間が経ってからの発言なので、いろいろバイアスの掛かった発言だろうとは思う。
それでも、出席者の多くが本音で話しているのは十分に感じ取れる。その理由は、組織的にバラバラで成り行きでそうなったとか、正しい情報が共有されていなかったとか、当事者意識を感じさせない無責任な言い逃れ的な発言が目立ったから。あまり露骨ではないけど、中国大陸で泥沼にはまったまま太平洋戦争に突入した陸軍への過剰な批判を避け、海軍にだって責任があるという気持ちも感じられた。
読んでいてむなしい気持ちになる本だけど・・・せめてもの救いは、「こうしていたら勝てた」的な発想がなかったことくらいだろう。編集の時点で削除された可能性もあるだろうけど。

BOOK「平成史講義」

平成史講義
吉見俊哉:編集
(ちくま新書:900円+税)

5月1日に改元される前に、平成史云々という本が何冊か出版されていた。あらかじめ天皇陛下のご退位がはっきりしていたからのことだろうけど、このタイミングで歴史をまとめる意義があるのかという疑問もあるけど、とりあえず一冊読んでみた。
平成時代は自然災害が多かったとはよくいわれるけど、インターネット、グローバル経済、地下鉄サリン事件、バブル崩壊、民主党政権、大震災、原発事故・・・みんな平成の出来事。いろいろなことがあった。
この本では、各分野毎に識者が短文で平成をまとめているけど、共通していることは・・・戦後の枠組みというか、昭和時代に上手くいっていた仕組みがみんな崩壊して、新しい枠組みを試行錯誤しながら、再構築に失敗した時代というニュアンスが浮かび上がってくる。わたしは、平成になる少し前・・・「Japan as NO.1」なんていわれた時期から、「日本はいまがピークで、今後は降り坂」と思いながらいままで生きてきたので、大筋では異論はないけ。でも、昭和の後半、あるいは戦後って、そんなに上手くいった時代なんだろうか? 戦後の復興、高度経済成長、公害の克服などはあったけど、「むかしは良かった」的な発想でちょっと無批判すぎるんじゃないかという気もする。

BOOK「徳川吉宗 国家再建に挑んだ将軍」

徳川吉宗
国家再建に挑んだ将軍

大石学著
(教育出版江戸東京ライブラリー:1,500円+税)
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吉宗は江戸幕府の八代将軍。時代劇にもたびたび登場する将軍で、歴代将軍の中でも人気のある人物だと思う。これはたぶん、テレビドラマ「大岡越前」の貢献によるものだろう。質素倹約と享保の改革をすすめ、目安箱を設置したとか、中興の祖として歴史の教科書でも多少は目立つ存在だったはず。
でも、中興の祖といわれると言うことは、それ以前がひどく低迷していたわけで・・・あまり低迷していたとは意識してはいなかった。たぶん、吉宗以前は新井白石が財政改革を行った時期だと思うけど、江戸幕府ってずーっと、いつも財政改革ばかりやっていた印象があるけど・・・吉宗の前は、戦国時代からの復興期が終わり、幕藩体制が確立して世の中が安定し、低成長時代になっていたらしい。
吉宗はそんな世の中のシステムをガラガラポンして、時代に合ったシステムに構築し直したわけだけど・・・いまの日本にも似ている点が多い。そういう意味では、戦後日本の中興の祖とでもいうべき、吉宗のような政治指導者が求められているわけだけど・・・残念ながら、いま現在の永田町には見当たらない。

BOOK「江戸の遺伝子」

江戸の遺伝子
徳川恒孝著
(PHP文庫:648円+税)
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徳川将軍家の末裔によって書かれた本。
江戸時代の評価が見直されて幾久しいけど、江戸時代について書かれた本を読む度に、そのユニークさとすごさに気づかされる。100年近く内戦で殺し合った後、300年近くも平和で繁栄した時代が続いたこともそうだけど・・・徳川家の政権の取り方、そして政権の放棄のし方が奇跡のようにすごい。しかもその間、植民地を広げる欧米列強とは最小限の付き合いしかしていない。
わたしの世代は、明治政府にはじまる徳川幕府否定の歴史観をベースに、日教組による唯物史観の偏向した歴史を教えられので、尚更そう感じるんだけど・・・でも、徳川将軍家の末裔に、江戸幕府の政策は良かったと手前味噌を重ねられると・・・ちょっとムッとする^^;;
だけど、いちばん驚くことは・・・そもそも、江戸時代が終わってまだ150年しか経っていないんだということ。しかも、その150年の内の3分の1をわたしは生きているわけで・・・。

BOOK「徳川がつくった先進国日本」

徳川がつくった先進国日本
磯田道史著
(文春文庫:520円+税)
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『武士の家計簿』の著者の本。やけに薄くて、活字が大きな文庫本だなというのが第一印象。講演録かなにかかと思ったら、NHKの番組を元に書かれた本だった。でも、活字が大きく読みやすかった。
基本的には、江戸時代を見直そうというノリで書かれているけど・・・「鎖国」「災害」「飢饉」「島原の乱」という江戸時代のエポックを切り口として、江戸幕府がいかに歴史の転換点を乗り越えてきたかを解説している。江戸時代は、260年も平和が続いた特異な時代だけれど、その間、政治経済社会が一様であり続けたわけではない。
戦国時代の終焉としての島原の乱、国防という意味ではロシアの南下への対応。民生への取り組みは天明の飢饉など災害からの復興というように、その時期の大きな課題を乗り越えてきたから、江戸後期の爛熟した社会が成り立ったのだと。現代社会と比べてどうだ、という視点で書かれた本ではないけど・・・正直いって、あまり進歩はしていないように感じるのはなぜだろうか?^^;;

BOOK「物語 財閥の歴史」

物語 財閥の歴史
中野明著
(祥伝社新書:820円+税)
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幕末期から明治期にかけて、日本にはいくつもの財閥が形成されて、いわば、資本の原始的蓄積が行われた。以後、金融恐慌やら戦争やら、財閥はそれぞれ栄枯盛衰の道をたどり、いまでもその名をとどめている財閥はいくつもない。非常に良くまとまった本で、財閥の形成の経緯などは期待以上の内容だった。
でも、やっぱりひとつだけわからないことがある。幕末期の日本は、世界史、あるいはアジア史的にみて、特殊な状況だったんだろうか? 江戸時代まで、日本の産出する金銀は豊富で、それなりに貨幣経済も進んでいたけど、どうしてこうも簡単に資本の集中が起こり、経済の近代化の牽引車となれたのか、ここだけはいまだによくわからない。
もうひとつついでにいえば、どうして日本郵船は三菱のスリーダイヤモンドマークを使っていないのか、これもわからない。こちらは、最初から期待していなかったけれど^^;;