BOOK「ストックホルムへの廻り道 私の履歴書」

ストックホルムへの廻り道
私の履歴書

大村智著
(日本経済新聞出版社:1,600円+税)
※古書を購入

2015年に「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生の著書。
生い立ちからはじまり、研究者の道に進み、北里研究所の経営、女子美術大学理事長と韮崎大村美術館の設立、そして郷里に温泉を掘ってしまうところまで、文字通りに「履歴書」的な自伝。
大村先生が開発した治療薬によって数億人が救われたといわれ、ノーベル賞受賞の報道の時は日本中が驚いた。わたしも何かで読んで、おぼろげながらその功績はしっていたけど、正直いって驚いた。ノーベル賞こそ受賞していないけど、実は、日本にはこういう功績のある科学者が何人もいる。日本人として誇らしいことだけど、一般には知られていないんだよなぁ。

BOOK「生命科学の未来 がん免疫治療と獲得免疫」

生命科学の未来
がん免疫治療と獲得免疫

本庶佑著
(藤原書店:2,200円+税)
※古書を購入

がん免疫治療の確立の功績で、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生の著書。
PD-1抗体の発見とがん免疫治療について解説しているのは、全体の3分の1程度で、後半は川勝平太(出版時は静岡県知事)との対談。本庶先生が静岡県立大学の理事長を務めている関係でのことらしい。自伝的な要素はぜんぜんない。
本庶先生の生命科学、基礎科学に対する姿勢や考え方、さらには人間の幸福といった思想について知る上では良い資料だと思う。
正直いうと・・・本庶先生自身がすごく立派な方なので逆に解らなくなってしまうのだけれど・・・単に目先の研究を追いかけていくだけでは立派な学者にはなれないのか、あるいは、立派な人間だからこそ科学の女神が微笑むものなのか?

BOOK「エッセンス! フレーバー・フレグランス」

エッセンス! フレーバー・フレグランス
化学で読みとく香りの世界

櫻井和俊/日野原千恵子/佐無田靖/藤森嶺著
(三和出版:2,500円+税)
※古書を購入

仕事の資料として読んだ本。
昨年から、似たような本を何冊か読んだけど、構成はほぼ同じ。食品に添加され、香りや味を調整する「フレーバー」、香水や芳香剤など食品以外に用いられている「フレグランス」について、科学的な側面から解説している。難解ではないけど、ベンゼン環が並んだ分子式なんかも出てくる。でも、目的があって読んでいるので、そういうところは飛ばしても問題がない。
「香り」「匂い」といった分野がわかりにくいのは、ある意味、人の五感の中で「嗅覚」がいちばん解明が進んでいないからなのかなと思っていたけど・・・必ずしもそうではないようだ。けっこう納得できるレベルまで研究が進んでいるし、香りは予想以上の分野で活用されている。

BOOK「リチウムイオン電池が未来を拓く」

リチウムイオン電池が未来を拓く
発明者・吉野彰が語る開発秘話
吉野彰著
(CMC出版:1,000円+税)

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生の本。
リチウムイオン電池は、スマホをはじめ身近なところでいろいろ使われていて、まさに世の中を変えた技術のひとつだと思う。むかし、ウォークマンを持ち歩いて外で音楽を聴く習慣はなかったけど、仕事で録音機能は頻繁に使っていたので、廃棄する使用済み電池は中々の量があった。最近ではテレビやエアコンのリモコンの電池交換くらいで、めったに電池を廃棄することがなくなった。それも吉野先生のお陰。
この本では、リチウムイオン電池の原理や開発に関することだけでなく、技術革新によって世の中がどう変わるか、今後どうなっていくかなど、吉野先生の考えがいろいろ述べられている。先日読んだ、『NHKカルチャーラジオ 科学と人間 電池が起こすエネルギー革命』とほぼ同じような内容だった。

MOOK「NHKカルチャーラジオ 科学と人間 吉野彰 電池が起こすエネルギー革命」

NHKカルチャーラジオ 科学と人間
吉野彰
電池が起こすエネルギー革命

吉野彰著
(NHK出版:985円+税)

NHKのラジオ第2放送のコンテンツ「カルチャーラジオ 科学と人間」シリーズをテキスト化した書籍。ノーベル化学賞を受賞した吉野彰先生のテキストを読んだ。
全13回の放送で、最初の数回は「電池の仕組み」や「電池の歴史」といった入門編。次いで、リチウムイオン電池の開発秘話など、吉野先生の研究開発、商品化に関わるお話。最後はリチウムイオン電池が世の中に与えた影響、今後の社会にどう貢献していくかなどの総括という構成。
ラジオ番組のテキストなので、ラジオにはない図解があったりして平易にわかりやすく、なにより読みやすい。マスコミの報道は研究開発での業績が中心で、商品の実用化、商品化への動きはあまり触れられていなかったけど、企業人としての側面にも触れられていて興味深かった。

BOOK「「香り」の科学 匂いの正体からその効能まで」

「香り」の科学
匂いの正体からその効能まで

平山令明著
(講談社ブルーバックス:1,000円+税)
※古書を購入

仕事の資料として読んだ本。
他にも入門書などを読んだけど、文化的な側面にも触れられているし、目次的には入門書とほとんど変わりがない。ただ、ブルーバックスなので、やっぱり出てくるのがカメの甲羅^^;; やたらと分子構造式なんかが出てくる。読み飛ばしてもぜんぜん問題はないけれど、やはり取っつきにくい印象がある。
香り、嗅覚に限らず、五感に関することは、文字では伝えようがないので・・・シトラス系だ、バルサミック系だといわれても、例示されたものを自分の経験の中から想像するしかない。果たして正しくイメージできたのか、それすらわからない。分子構造を示されてもなんらイメージできない。このへんが難しいところだ。
そういえば、電子メディアに対抗する印刷技術として、ニオイのする印刷という技術があったけど、一度としてお目に掛かったことがない。こういう分野の本にこそ使うべきだと思うのだが・・・。

BOOK「原発とプルトニウム パンドラの箱を開けてしまった科学者たち」

原発とプルトニウム
パンドラの箱を開けてしまった科学者たち

常石敬一著
(PHPサイエンス・ワールド新書:840円+税)
※古書を購入

この本の大半はサブタイトル通りに、レントゲンによるX線の発見から原爆製造のためのプルトニウム生成までの研究史をたどっている。放射線が発見されてから、マンハッタン計画で軍事利用される中で、様々な科学者の業績や活動が紹介されている。その上で、原子力の「平和利用」としての原発。そして、原発から日々生み出されるプルトニウムの問題をとりあげている。
原発に関する話としては、沸騰水型軽水炉(BWR)と加圧水型軽水炉(PWR)についての説明がわかりやすい。東日本と西日本で棲み分けがあることははじめて知った。
著者の問題提起は、自然界にはほとんど存在しないプルトニウムという猛毒の放射性元素を、これ以上増やしてはいけないということ。日本の「核燃料サイクル」の愚かしさを問題視している。すでに核燃料サイクルは破綻しているのだから、さっさと止めてしまえばいいのだけど・・・その先どうするかというところがはっきりしない。トイレのない住宅どころか、出口すらないという印象だ。