BOOK「秀吉と利休」

秀吉と利休
野上彌生子著
(中公文庫:300円)
※自炊本を再読(昭和50年に購入)

野上彌生子は明治18年生まれの作家で、『ホトトギス』で文壇デビューした、わたしにとっては半分歴史上の作家。この『秀吉と利休』は、1964(昭和39)年に中央公論社から出版され、第3回女流文学賞を授賞した。
千利休を描いた小説として、高校時代にはじめて読んだけど・・・その歴史観・価値観はいま現在に至る紋切り型のもの。いわば、その総集編とでもいうべき内容だった。つまり、利休は「わびさび」であるのに対して秀吉は「華美」。利休は茶道的に高尚で天才であるけど、秀吉は凡才で俗人的。利休は精神的に成熟しているけど、秀吉は稚拙で独善的・・・。利休を絶対視して、対比として秀吉をとにかく貶める価値観で書かれている。高校時代は無批判に読んだので、そういうものなのだろうと素直に信じてしまった。
最新の研究では、利休や秀吉の茶道に関する見方も変化してきてはいるけど、まだまだこの価値観が一般的。この小説も古典的なものとして割り切れば、いまでも面白く読めた。

古田織部美術館 2019年秋季展 ICOM記念 館蔵名品展(京都府京都市)


5年ほど前にできた美術館で、以前から来たいと思っていたけど、京都に来てもなかなか時間がとれず、ずっとパスしていた。今回ようやく見に来ることができた。
古田織部は戦国時代から江戸初期の武将・茶人にして利休七哲の一人。独特の緑釉の織部焼など、独特の美意識で「織部好み」といわれる一連の茶道具や庭園などを生みだした。徳川時代まで生き延びた大名ではあるけど、これといった武勲はない。
2019年秋季展 ICOM記念 館蔵名品展
2020年1月14日(火)まで。
茶道具では、本阿弥光悦作の色替り赤筒茶碗「有明」、蜂須賀家伝来長次郎作赤茶碗、玄悦作御本釘彫茶碗などに加え、朝鮮出兵帰に持ち帰った虎の頭蓋骨など、50点を展示。
わたしは、今日に伝わる茶道文化が固まる以前の、「数寄者」の自由闊達さ、独創性を感じさせる存在として古田織部は好きだ。工芸家ではないので、自作したものはないけど、いわゆる「織部好み」は肌に合う。
アニメ『へうげもの』も見ていたけど・・・好みの茶道具に出会ったときの、嬉々とした感じがさもありそうな表情だった。小さな美術館ながら、その織部好みの茶道具などを集めている。当然ながら、館内は撮影禁止。

BOOK「千利休 切腹と晩年の真実」

千利休
切腹と晩年の真実

中村修也著
(朝日新書:amazon:648円)
※Kindle版を購入

中学時代から茶道を習っていて、学生時代は茶道関係の本をいろいろ読んだ。いつも気になったのは、狂信的なまでの千利休崇拝。そして、いま現在の家元制度の都合に合わせた曲解。利休が美化されまくり、三千家の正当性を後付けしようと、明らかに歴史と合わないことも多々あった。
さらに、利休との対比で、秀吉は華美で醜悪とする盲目的な歴史感にも辟易した。わたしは・・・何の根拠もないけど、利休と秀吉は仲良くお茶を楽しんでいたのだと思っている。
ところが、時代は進んで凄い本が出ていた。「わび茶」の起源は利休ではない、さらには利休の切腹すら否定している。
まだ定説として認定されていないので、歴史の教科書が書き換えられるのは先だろうけど・・・ほぼすべて納得できる内容だった。お陰で、ン十年の胸のつかえが取れた気がする。

東京国立博物館 特別展 茶の湯(東京・上野公園)


混雑を覚悟し、意を決して、東京国立博物館の特別展『茶の湯』を見に行った。上野駅公園口を出た途端、平日なのに異常な混雑で・・・パンダのご懐妊が原因らしいけど・・・当然のように東博も混雑していた。
若かりし頃、茶道関係の写真集の仕事などをしたことがあるので、いろいろ名品を見たことがり、この特別展で、いくつか再会できる名品を楽しみにしていた。中でも、徳川美術館所蔵の肩衝茶入『初花』は30年ぶりに見るので、初恋の女の子に再会するくらいの期待を抱いていたのだけど・・・期間限定の展示だったとかで、いなくなっていた^^;; 失意と腰痛にうちひしがれながら、2時間かけて興味のある展示は一通り見た。
いつも思うことだけど、こういう混雑した展示会って、ものすごくフラストレーションがたまる。徳川美術館で『初花』が常設展示されているのなら・・・見に行くんだけどなぁ・・・。

BOOK「利休にたずねよ」

rikyuunitaduneyo利休にたずねよ
山本兼一著
(PHP研究所:1,800円+税)
※古書を購入

直木賞を受賞してからずいぶん経ったけど、ずっと忘れていた。amazonで古書を買ったのだけど・・・1円+送料257円で売られていたから文庫本だと思い込んでいたら、ハードカバーが届いて驚いた。でも、ハードカバーなのに活字が小さくて、老眼鏡の出番^^;;
映画の宣伝の影響だろうか・・・この小説、若かりし日の利休が出会った女性との恋愛をベースに、利休の茶道観などを表現しているのだろうと思って、ちょっと侮っていた。けっこう、利休の茶道観や秀吉との関係など、わたしの考えに近いものがある。
とかく、美の探求者としての利休、世俗の代表である秀吉という紋切り型の対比で捉えられることが多い両者だけど、わたしはこの二人、かなり深いところで本当に仲が良かったんじゃないかと思っている。
たしかに利休はわび茶の世界観を完成させはしたけど、同時に、歌舞伎者的な創意工夫を取り入れ、村田珠光や武野紹鴎からなる伝統的茶道や美意識の破壊を行っている。このあたりの価値観は、秀吉と通ずるところだと思う。
だから、秀吉の黄金の茶室を作ったとき、利休は意外に張り切って、金ピカならではの創意工夫を施したんじゃないかと思う。なぜなら、天下人たる秀吉だからこその黄金の茶室であって、それを作れるなんて、利休のクリエイターとしての血が騒いだと思うから。まあ、この小説ではそう描かれていないけど^^;

BOOK「茶道具 しまい方の基本」

sadougunosimaikata茶道具 しまい方の基本
入江宋敬著
(淡交社:1,500円+税)
ISBN/ASIN:4473017659

実家からいくつか持ち帰った茶道具・・・。例によって、素人がデタラメに扱い、ヒモの結びもデタラメのままという状況。
年をとってぼけてきたのか、茶道具を入れる箱の真田紐の結び方が思い出せず、仕方なく参考書として購入した。・・・日常的に茶道具を扱っているわけではないので、忘れても仕方がないのかも知れないけど。
当然、結び方も載っているだろうと思って買ったら、大半が文字通りに道具のしまい方について書かれていてちょっと焦った^^; すると、最後の最後、モノクロページに「四方右掛け」と「四方左掛け」「つづら掛け」の説明があった。とりあえず、それだけわかれば十分なので、用は足りた。

BOOK「茶 利休と今をつなぐ」

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利休と今をつなぐ
千宗屋著
(新潮新書:740円+税)
ISBN/ASIN:4106103926

武者小路千家の次代家元が書いた本。・・・よく知らないけど、当代家元の不徹斎宗守の息子だろう。・・・武者小路千家は、表千家、裏千家と共に、千利休から始まる三千家のひとつ。
正直いって、いままでいろいろ茶道に関する本を読んできたけど、家元やそれに連なる人たち、加えて、茶道研究家なるよくわからない人たちの書いた本は、総じて面白くない^^; 一から十まで、判で押したようにステレオタイプの茶道観ばかりで、カビ臭さしか感じないような本ばかりだった。
特にいただけないのは「千利休の神格化」。利休は絶対で、秀吉は下世話という対比。利休が生み出した「侘び寂び」が唯一絶対的であるという慢心。・・・これらのすべてが、時代に合わなくなった自分たち茶道関係者の言い訳にしか聞こえない^^;
その点、この千宗屋の考えや茶道観は、やや変化が見られる。もちろん、自分が生まれ育った武者小路千家がアイデンティティである以上、これまでの茶道観を全否定は出来ないのだろうけど・・・時代にあった新しい茶道観の芽生えと言っていいかも知れない。